弁護士の渡辺達生です。
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2026年7月17日、皇族数確保に向けた改正皇室典範が成立しました。
改正皇室典範の大きなポイントは、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持できること、旧11宮家の男系男子を皇族との養子縁組をできるようにすることの2点です。
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7月18日の北海道新聞には、「男系固執の改正皇室典範 象徴制揺るがし歴史に禍根」と題する社説が掲載され、「男系男子に固執し、世論と乖離した状況が続けば象徴天皇制は根底から揺らぐ。世襲による皇統の存続も危うくなり、歴史に禍根を残しかねない。旧宮家からの養子制度をやめ、女性・女系天皇を含む皇位継承策を議論し直すべきだ。」と述べています。他の新聞も改正皇室典範には概ねこのような評価をしています。
このような評価の背景には、女性・女系天皇を認めるという世論が大きいということがあります。
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象徴天皇制が必要という立場に立てば、時代に合わせて、女性・女系天皇を認める方向で皇室典範を改正することが合理的だということになるでしょう。しかしながら、改正皇室典範を巡る議論を見ると、私は、むしろ、象徴天皇制の問題が明らかになったと見るべきではないかと考えています。
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日本国憲法第3条では「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」と規定し、第4条1項では、「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。」と規定しています。そして、第7条では、1項から10項で国事行為を具体的に規定しています。
これらの規定を前提にすれば、天皇は国事行為以外はなしえない、天皇の国事行為以外の行為は全て天皇の私的な行為と評価すべきというのが条文に沿った解釈だと思います。
一方、第1条は、「天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。」と規定しています。象徴の社会的意味としては、鳩が平和の象徴であると言われることがあたります。一方、象徴の法的意味としては、大日本帝国憲法での天皇の地位(統治権の総覧者)を否定することが最も大きいと言うべきであり、私は、象徴にそれ以上の法的な意味を求めるべきではないと考えています。
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このブログを読まれる方でも、裕仁さん(昭和天皇)から明仁さん(平成天皇)に天皇がかわり、天皇へのシンパシーを増した方も少なくないかもしれません。裕仁さんの場合には、第二次世界大戦の戦争責任の問題が常について回りましたが、明仁さんにはそれがありませんし、明仁さんは美智子さんと一緒に被災地を訪問し被災者を励ましたり、第二次世界大戦の爪痕が残された場所に行き平和の重要性を訴えたりしたことも、それらの背景にあると思われます。
ただ、象徴としての天皇が具体的な行動をして、国民に様々な訴えをすることを憲法上どう評価すべきかは全く別の問題だと思います。明仁さんや徳仁さん(令和天皇)は、今は平和の重要性を訴えていますが、彼らが、軍事力の強化や防衛の重要性を訴えるようになる危険性は常にはらんでいます。もし、そうなった時、それを止める方法はありません。
また、第1条には「主権の存する日本国民の総意に基く」と規定されていますが、「総意」を確認する手続等の規定は一切ありません。前述の新聞の社説のように、「総意」を世論に近づけて理解することは非常に怖いことです。世論については、作られている側面が必ずありますし、ネット社会になり、その側面がより強くなっていると思われます。第二次世界大戦では、日本は、国体護持のもと、侵略戦争を行ったわけですが、そこでも天皇制を支える世論がありました。そのことも忘れてはなりません。
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女性天皇を主張する方の少なくない方は、愛子さんを天皇にとの思いを持っています。そのことを明言する野党の有力な国会議員もいます。ただ、現時点で、文仁さん(秋篠宮)が皇嗣となっており、そのことを前提に、今回の皇室典範の改正の議論がなされています。愛子さんを天皇にするということは文仁さんを廃嫡することを意味します。
法律的にはできないことではないですが、そのような経過を経て誕生した天皇がどのような存在になるのか、それが国民主権にとってどのような意味を持つのか、そこを冷静に見ることが不可欠だと思います。国会の議決によって誕生した天皇は、今までの天皇とは全く別の権威を持つことになります。そのような天皇が存在すること自体が、私は、国民主権や民主主義にとってマイナスしかないと考えています。
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翻って考えるに、本当に天皇制は必要でしょうか?憲法が規定する国事行為は形式的な行為であり、天皇がやらなければならないものではありません。
皇族の「公務」の負担が大きくなっているので、皇族数を確保することが必要になるというのが、今回の皇室典範の改正の一つの理由ですが、前述のとおり、憲法が要請しているのは天皇の国事行為おみであり、皇族がしている「公務」は憲法上は皇室の私的行為と評価すべものです。また、「公務」の中に皇族がやらなければならないものがあるのでしょうか?例えば、日本赤十字社の名誉総裁には雅子さん(現皇后)が、名誉副総裁には紀子さん(秋篠宮妃)外4人の皇族がなっていますが、名誉職である以上、組織上必要なものではありません。皇族の「公務」の負担が大きいというのであれば、できる範囲でやればいいだけだと思います。
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皇族にかかる費用は全て税金で賄われていますが、その金額も無視することはできません。皇室費(皇室の活動や皇室用財産の維持管理等に必要な経費など)は年間75億円程度で、宮内庁の費用が年間約125億円で合計200億円程度になっています。現在の皇族は17人ですので、1人あたりの費用は11億円余りとなります。決して少ない金額ではありません。この金額を減らして、もっと外のことに使うことも考えていいと思います。それと合わせて、皇族の活動にそれだけの価値があるのかということの評価は必ず必要だと思います。
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以上、天皇制が本当に必要かという観点から、私の意見を述べさせていただきました。護憲は重要です。ただ、どのような社会を作るのかというメッセージも重要です。天皇制が無くなれば、より、平等な社会ができるのではないでしょうか?
少なくとも、象徴天皇制と国民主権とは緊張関係にあるということは、必ず頭に置いておく必要があると思います。
皆さんは、如何お考えですか?
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