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■ 美輪明宏さんの言葉

 美輪明宏さんが91歳で亡くなりました。美輪さんが生前直筆で残した言葉を目にしたとき、思わず胸が詰まりました。

「こんな世の中を
生き抜く武器は
愛の言葉しかありません
この世のすべての問題を
解く鍵は愛です
愛があれば
戦争なんか起こりません」

 故郷の長崎で10歳で原爆投下を経験した美輪さんの、最後に遺した言葉が「どうすれば戦争が起こらないか」についてであったことを私たちは胸に刻まなければならないと思います。

■ ある元裁判官の言葉

 先日、所属する法律家団体の総会で元裁判官である森野俊彦弁護士の講演を聞きました。自身の裁判官人生を踏まえた軽妙洒脱なお話の最後、「これからの会員に期待すること」として、「憲法と民主主義が裁判所に、司法に、世の中にもっと根づくべきという初心をわすれないこと。迷ったときにそういう生き方をすることを忘れないこと。」という言葉を受け取りました。
 私は、憲法に書き込まれている人権は、歴史の中で保障されてこなかった権利の裏返しなんだな、と考えてきました。戦争や抑圧の歴史の中で、国家に都合の良いように人間の身体、命、自由が奪われる。その歴史の針を逆戻しにしてはならない―これは今を生きる私たちに託された約束です。
 憲法97条が、「この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」と記すとおり、憲法が保障する基本的人権は、私たちが将来の世代に間違いなく手渡すために託された侵すことのできない永久の権利です。

■ 大国の大統領が語る言葉

 アメリカのトランプ大統領は「国際法は無意味だ」と言い、ミラー大統領主席補佐官は「我々は強さと武力が支配する現実世界に生きている」と語っています(朝日新聞の連載「帝国の幻影 壊れゆく世界秩序 第6章」より)。大国のリーダーがこんなにも堂々と力による支配を肯定する姿勢に、私は驚き呆れました。
 力による支配が横行する世界では、弱いものが真っ先に傷つき、死んでいきます。そのとき傷つけられるのは、幼い子どもたちであり、年老いた父母や祖父母、障害や病気のある人々です。10歳だった美輪さんは焼き尽くされた長崎の街で、そのことを心の底から感じ取ったのではないでしょうか。
 弁護士は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命として課せられています。依頼者の権利利益を守るという職務に加えて、基本的人権をもっとも傷つける「戦争という暴力」を決して許してはならないということもまた弁護士の使命である、私はそう思っています。
 先日、日本弁護士連合会から、「戦争をしない、させない長崎宣言」のパンフレットが発行されました。絵本作家長谷川義史さんのイラストがあしらわれ、手に取りやすいデザインとなっており、温かいイラストがみんなで考えるべき問題をぐっと身近なものにしてくれています。ぜひお読みくだい。

https://www.nichibenren.or.jp/library/pdf/jfba_info/publication/pamphlet/nagasaki_sengen.pdf

■ 知ること、理解すること、愛すること

 今春、旧優生保護法に関連する調査として、ドイツを訪れました。ドイツは国家として、ナチスの過ちを記録し、記憶しようとしてきました。そのようなドイツの「記憶の文化」に触れ、分断や排除が一体、どんな結末を引き起こすのかをまざまざと見せつけられました。自らが引き起こした過ちを忘れずに記録し、記憶し続けることが、二度と同じ過ちを犯さないために必ず必要だということを学びました。
 また、現地での出会いを通じて、私たちは繋がり合える、という喜びを知りました。海を越えて互いの活動を知ることで勇気をもらい、励まし合えるということを実感しました。
16年前、韓国の弁護士から、「知ることは理解することにつながり、理解することは愛することになる」という言葉を授かったのですが、日本から訪れたまだ若い私たちに彼がその言葉を伝えようとしてくれた意味を、今ようやく本当の意味で受け止められるようになったと感じています。

 国家間の戦争だけでなく、私たちの身近にある紛争やトラブルも、根底にあるのは「分断や排除」かもしれません。
 目の前の依頼者の方の苦しみに寄り添い、「知り、理解し、愛する」こと。それこそが、一人の法律家として私が大切にしたい、すべての問題を解く鍵だと信じています。

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