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弁護士の小野寺信勝です。

外国人技能実習適正化法が成立

2016年11月28日に外国人技能実習適正化法が成立(正式名称:外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律)、今年の11月1日に施行される予定です。

 

深刻な人権侵害

技能実習制度の目的は海外の途上国の青壮年に日本の技術を教える国際貢献にありますが、その実は外国人労働者受け入れのための制度であることは周知の事実です。

技能実習制度を巡っては低賃金・長時間労働、パスポートや通帳の取り上げ、暴力、性被害などの人権侵害が頻発しています。技能実習生の人権侵害の根本的な原因は、技能実習生に転職の自由がないことにより、労使が対等ではなく、支配従属の関係になり得るということです。

 

新法で人権侵害は解消できるか?

ところが、新法では罰則の規定を設けたり、技能実習機構を創設するなど適正化を意識した内容が盛り込まれましたが、人権侵害の根本原因である転職の自由については一切対策を盛り込みませんでした。他方で、新法では技能実習期間を現行の最大3年から5年に延長していますから、制度「拡充」に軸足を置いた法律と評価せざるを得ません。

また、年内には技能実習の対象職種に介護分野の追加も予定されています。これまで技能実習は農業や製造現場等に限られていましたが、介護の解禁によって対人サービス分野にも門戸を拡がることになります。

約20万人の技能実習生が働いていますが、技能実習期間の延長や対象職種の拡大によって、益々技能実習生が増加することが予想されます。

つまり、日本政府は人権侵害の手当が不十分なまま外国人労働者を技能実習制度という「サイドドア」による受け入れを追認し、そのドアを益々開けようとしているのです。

 

韓国の雇用許可制

話は変わりますが、お隣韓国では日本の旧研修制度(技能実習制度の前身)を参考に産業研修制度を導入しました。しかし、人権侵害や失踪が社会問題になり、雇用許可制を創設し、外国人労働者を「労働者」として受け入れています(最大4年10ヶ月)。韓国では96万人の外国人労働者が働いていますが、うち26万人が雇用許可制で働いています。

韓国の雇用許可制を手放しで評価することはできませんが(職場移転の回数制限や家族帯同を認めないことは人権上の問題を孕んでいますし、そもそも短期ローテーション制度で外国人を受け入れることの是非についても議論があるところです)、フロントドアから受け入れている点は評価することができます。

 

外国人労働者の受け入れ

外国人労働者への人権侵害や日本の労働人口が減少への対応は喫急の課題です。まやかしの制度を辞めて外国人労働者を「労働者」として正面から受け入れる制度を早急に構築すべきです。

 

 

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