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目次

 弁護士の渡辺達生です。

1 最高裁判決

 2025年6月27日、最高裁判所は、2013年8月に実施された生活保護基準の引下げに伴う生活保護費減額処分の取消しを求めた訴訟について、生活保護基準の引下げの違法性を認め、生活保護費の減額処分を全て取り消す判決を言い渡しました。
 この引下げは、「ゆがみ調整」及び「デフレ調整」の2つを理由として、生活扶助費を平均6.5%、最大10%引き下げたものでした。判決は、このうちデフレ調整が違法であったと判断して、本引下げに係る各原告らの生活保護費の減額処分の全部を取り消しました。
 このように、生活扶助基準の引き下げを違法とした最高裁判決が確定した以上、訴訟を起こした原告だけでなく、全ての生活保護利用者に対して、減額前の基準との差額を全額支払うと共に、10年以上の裁判を原告に強いてきたのですから、国が原告に対して謝罪をするのが当然のことです。

2 専門委員会の報告書

 しかしながら、国は、最高裁判決への対応に関する専門委員会を立ち上げ、その専門委員会の報告書を受けて、最高裁判決を蔑ろにする対応策を発表しました。
 その内容は、原告を含むすべての生活保護利用者に対し、(1)本判決で違法とされなかった「ゆがみ調整」を再実施し、(2)本判決で違法とされた「デフレ調整(ー4.78%)」に代え、低所得者の消費実態との比較による新たな「高さ調整」(水準調整)を「ー2.49%」行い、(3)訴訟に参加した原告らについてのみ「特別給付金」として、(2)の高さ調整(水準調整)による減額相当分を追加給付するというものです。

3 最高裁判決の趣旨に背く政府の対応策

 しかしながら、この対応策は、最高裁判決の趣旨に背き、生活保護の平等な適用に反するものです。
 まず、(1)最高裁判決は、デフレ調整のみを違法とし、ゆがみ調整については違法と判断していないものの、結論として生活保護費の減額処分「全体」を取り消しています。それにもかかわらず、ゆがみ調整を再度行うという今回の対応策は、処分全体を取り消した本判決の趣旨を無視することに他なりません。
 また、(2)高さ調整(水準調整)を再度実施する根拠として、専門委員会において、当時の経済情勢の下での生活扶助基準の水準と一般国民の生活水準との間に不均衡があったと認められたこと等を挙げています。しかしながら、この点は、被告らが訴訟においてデフレ調整が適法である根拠として主張してきたものですから、再度減額の根拠として用いることは、最高裁判決の判断を蔑ろにするものでるとともに、訴訟の蒸し返しでもありますから、決して許されないものです。
 さらに、対応策は、(3)特別給付金の支給対象者を訴訟に参加した原告に限定し、原告らとそれ以外の生活保護利用者とで異なる対応を行うこととしています。この訴訟は、「代表訴訟」的性格を有するものですから、原告であったか否かによって区別することは、生活保護利用者を差別的に取り扱うものです。同じ境遇にあった生活保護利用者について、救済・補償の場面で差異を設けることは、法の下の平等に反するものです。

4 審査請求にご参加を!

 国は、このように、最高裁判決を蔑ろにするような対応策を進めると共に、原告に対する謝罪は拒否しています。
 ただ、対応策の予算規模は2000億円であり、この対応策により、生活保護利用者に対し平均10万円程度の金銭が支給されます。このこと自体は、訴訟をたたかったことによる非常に大きな成果です。
 年度内に、原告及び原告ではない生活保護利用者に対し、この対応策に基づいて、保護費の給付が行われます。しかしながら、この保護費の給付は、3で述べたように最高裁判決を蔑ろにし、法的にも非常に大きな問題をはらむものです。
 北海道の引き下げ訴訟の原告団の母体である北海道生活と健康を守る会連合会は、この給付に対する審査請求を幅広く取り組むことを決めています。今、生活保護を利用している方は、審査請求の対象になります。生活と健康を守る会連合会に相談して、審査請求に加わって、国の対応策の問題を明らかにしていきましょう。

 連絡先 北海道生活と健康を守る会連合会(道生連) TEL 011-736-1722 メールアドレス doseiren@joy.ocn.ne.jp

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