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弁護士の桝井妙子です。


■    フランス、ロシアの教室から


「私のフランスよ(ma France à moi)」
「若者たちよ、闘わなければならない。私はあなたたちとともにいる。」

フランスでは教育環境の改善を求める高校生を始めとするデモが続いている。86歳のおばあさんが高校生に囲まれて、このように語っている動画を目にした。フランス革命の標語がもととなっているフランスの国是「自由・平等・友愛」を感じさせる姿であった。

先日、シアターキノで上映中の映画『プーチンの愛国教室』を見た。アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を受賞した作品で、監督はロシアの田舎町の学校で行事と撮影を担当する教員のパーシャである。

2022年2月24日のウクライナへの特別軍事作戦以降、学校の空気が一変し、愛国教育、軍国教育に協力せざるを得なくなっていく子どもたちや教師の姿が描かれている。

「‘‘愛国‘‘を推すのは、この国に問題があると言っているのと同じだ。」
「正しい行いのために、あるいは愛のために、すべてを捨てなければいけないときがあるのです。」

心根の優しいパーシャの言葉はどれも印象的だった。しかし、子どもたちの大切な居場所でもあったパーシャは、ロシアに住むことができなくなってしまった。

ニューヨークのマムダニ市長も、7月3日、米国建国250周年の演説で「『好きでなければ出て行け』と単純な言葉で応じる人もいます。しかし、愛国心とは、この国に欠点がないふりをすることではありません。」と語っている。

国を愛することと、その国の現在のあり方に異議を唱えることは、決して矛盾しないと思う。


■    長野の教室から


長野県歴史教育者協議会の飯島春光さんに「私と松代大本営・満州移民の歴史と取り組み~中学生とともに学んだ戦争の加害と歴史~」と題した講演をいただいた。

太平洋戦争中、長野県では開拓団として多くの人が満州に送られた。敗戦後、引き揚げる中で9割を超える人が亡くなってしまった集落もある。満蒙開拓青少年義勇軍として多数の少年も満州に送られた。
こうした歴史を背景に、長野県の小中学校には中国残留婦人や中国残留孤児の3世、4世にあたる子どもたちがいる。
学校でその子たちに対するいじめが起きたとき、飯島さんは「中学生の祖父母たちがなぜ、日本が『満州』と呼んだ中国東北部に行き、どのように助けられ、その後何十年も生きてきたかという人々の歴史を知ることなしにこのいじめは克服できない」と考え、子どもたちとともに学びを重ねてきた。

飯島さんは教員として、自分の根本にあるものをどう伝えていくか、ということを語ってくださった。

(1) 満州移民、満蒙開拓青少年義勇軍の歴史をすべての学校・地域で学ぼう。
(2) 中国に由来する人々(子どもたち、その親)の悩みに寄り添い、ともに生きよう。
(3) 中国の文化をともに学ぼう(教えてもらおう)、日本人化教育ではなく多文化共生を。

飯島さんから託されたこのメッセージを、私も大切に受け取りたいと思う。

フランス、ロシア、そして長野。それぞれの教室をめぐる人々の姿を通して、改めて考えた。
私たちが自然に持ちうるのは、「国家」という作られた概念に対する愛ではなく、故郷への愛ではないか。
そこで暮らし、ともに生きる人々への愛なのではないか。

私は、春のはじめに、大通公園の四隅に立つモクレンの木のつぼみが日一日と膨らんでいくのを眺めるときに、この街を好きだと思う。


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