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弁護士の橋本祐樹です。

以前、このコラムでも「司法修習費用の給費制についてのパブリックコメントのお願い」という形で、司法修習生の給費制の復活を求める活動について、少しご紹介させていただきました。
今回は、司法修習費用の給費制が廃止され、給与が与えられないまま1年間の司法修習を義務づけられたため(修習に専念する必要から、アルバイト等はできません)、生活費をまかなうために国から約300万円の借金をしながら司法修習を終了した元司法修習生(昨年12月に弁護士登録した現在1年目の弁護士たちです)が、国に対して提訴をしたことをご報告致します。
8月2日に提訴したのは、東京(原告118名)、名古屋(原告45名)、広島(16名)、九州(32名)の4地裁です。この原告というのは、全て昨年12月に弁護士登録した現在1年目の弁護士たちなのです。代理人は全国で463名が名を連ねています。

その名も「給費制廃止違憲訴訟」です。
報道では、前年までの司法修習生との差別で平等権を侵害するということのみが伝えられていますが、もう少し深い内容があるので、少しややこしいですがご説明します。
まずこの訴訟は、法曹三者を一体的に養成する統一修習が、国の人権擁護義務及び憲法擁護義務(憲法11条、13条前段、97条、99条)に基づく憲法上の要請として実施されていることを前提に、司法修習生が公務員に準ずる地位にあり(憲法15条1項、2項)、司法修習の目的達成上不可欠のものとして修習専念義務を負っていることからスタートします。
その上で、憲法上の権利として、司法修習生の給費を受ける権利というものを構成します。この司法修習生の給費を受ける権利は、?給費制が国民の権利擁護のための統一司法修習及び修習専念義務と不可分一体な国の憲法上の義務であること(憲法第3章及び第6章)、?司法修習生の修習専念義務による権利制約及び修習専念のための経済的生活保障であること、?法曹になるという人格的選択をした司法修習生が生活を維持しながら司法修習に取り組む権利として、憲法13条後段、21条1項、22条1項、25条1項、27条1項により保障されるのです。
しかしながら、1年間無給で修習をし、すでに法科大学院で平均340万円の奨学金による借金があるにもかかわらず、さらに約300万円の借金を負わされ、年老いた親や弟妹に連帯保証人を頼まざるを得なかったのであり、司法修習生の給費を受ける権利が侵害された実態があるのです。
そこで、国による給費制廃止と原告らの司法修習にあたり給費制廃止の弊害が実際に生じているのに給費制を復活させなかった不作為が違憲違法であり、国家賠償法に基づき請求をするのです。本来なら、給費制であれば得られたであろう給費請求相当額と慰謝料として300万円以上の請求をするべきなのですが、この訴訟では、原告らは自身の救済のみならず法曹の公共的・公益的使命を自覚し本訴訟に参加しています。法曹の公共的・公益的使命という観点からすると、本訴訟は約300万円などという金額以上の価値を有するため、請求において金銭的な意味を排除すべく、一人当たり1万円の請求をしました。

この訴訟の意義は、司法修習生への給費制が国民のための司法を担う法曹養成が国の憲法上の義務であることを確認し、新第65期司法修習生であった原告らの被害回復にとどまらず、法曹の多様性確保のため志ある人材が経済的事情で法曹を断念することのないようにし、国民の人権擁護を担う司法制度の維持発展を目的とするものです。
平均600万円以上の借金を背負った新人弁護士が、慣れない仕事の終わった後、ボスの帰ったあとに訴状の起案をしました。そして何度も会議をもって57ページの訴状に仕上げました。自らの利益のみならず、法曹を目指す者のため、広く国民のため、人権が尊重される司法制度のためという目的を忘れることなく準備した新人弁護士は非常に尊敬できます。
訴訟と社会運動は、車の両輪です。このような新人弁護士を法曹界全体が支持し、世の中に向けて、給費制の意義、給費制廃止下での司法修習の実態についてご理解いただけるようにしないといけないと思います。

私も、給費制廃止違憲訴訟弁護団の一員として、給費制が復活するまで、新人弁護士とともにがんばっていこうと思います。
一人でも多くの市民のみなさまのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

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