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目次

1 恵庭市の牧場における知的障害者虐待

 弁護士の中島哲です。

 2023年6月16日付けの北海道新聞朝刊に「障害年金を横領された」「恵庭の牧場提訴へ」という記事が掲載され、私のコメントも掲載されました。

 この牧場は、恵庭市議を20年間務め、市議会議長経験もある故・遠藤昭雄氏が経営していた牧場で、3名の知的障害者が数10年間住み込みで働いていました。
 私も含めた弁護団がこれまで調査を進めてきたところによりますと、この3人は牧場の敷地内に設置されたプレハブ小屋に居住しており、水道は通っておらず、暖房も1人の小屋にしかなく、お風呂も普段は入れないような劣悪な環境で生活していました。
 この3人は、このような悪条件下でほぼ毎日休み無く牛の世話や農作業に従事していましたが、給料が支払われたことはありませんでした。
 そればかりか、3人には障害年金が支給されていましたが、銀行口座は遠藤氏らが管理しており、年金が3人の手に渡ることはありませんでした。この年金額は、把握できているだけで合計5000万円以上にのぼります。

2 障害のない人相手なら許されない行為が、障害者ならば許されるのか

 北海道新聞には、「給料と年金で3人の生活費を賄っていた上、小遣いも渡していた。一生懸命世話をしたのに残念だ。」との遠藤氏の妻のコメントが掲載されていました。
しかし、想像してみて下さい。これが障害者でない、一般の労働者であれば、幾ら住み込みとはいえ、給料をまったく支払わず、年金を使用者が当然のように懐に入れたうえで、「小遣いも渡していた。一生懸命世話をした」と言ったところで許されるものでしょうか。
 また、幾ら住み込みといえど、水道が通っていない部屋、さらには冬の北海道で暖房のない部屋での生活など考えられるでしょうか。
 たとえ、障害者であったとしても、障害を持たない人々と同じように、当然に人格的な尊厳は尊重されなければならないですし、当たり前の権利は当たり前に保障されなければならないと考えます。

 驚くべきことに、故・遠藤昭雄氏は、恵庭市における障害者関連団体の会長をしていました。最近は、「農福連携」が注目され、農業や畜産業の現場で働く障害者もいっぱいいます。そして、大多数の農業・畜産業経営者は、まっとうに障害者を雇用しているはずです。
 本件のような経営者が存在することにより、健全な農福連携が阻害されることを深く懸念します。2度と同じような被害を出さないために、遠藤牧場の責任は明確にされなければならないと考えております。

3 恵庭市は行政として責任ある対応を

 また、弁護団の調査によると、恵庭市は、2016年ころに、この3人のことを把握しており、当初は虐待も視野に入れて裏取りをしており、3人が劣悪な環境にあることも、年金搾取の可能性があることも把握していたようですが、遠藤氏が元市議会議員であり、かつ市議会議長であることが判明したことから、虐待案件としてそれ以上調査を進めることを止めたようです。

 私たちは、この恵庭市の対応についても、行政として大いに問題があったものだと考えております。

 今後、恵庭市が行政として、どのように対応していくかを注目しているところです。
 恵庭市が、障害者をどのように見ているのか、が問われています。

 (後編に続く)

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