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目次

1 同意もしていないのに個人情報が自衛隊に提供されている!?

弁護士の桝井妙子です。
同意もしていないのに、自治体から自衛隊に個人情報が提供されていることをご存じですか?
2022年、自衛隊のリクルートパンフレット送付のために、札幌市(18歳と22歳)、旭川市(18歳と22歳)、帯広市(18歳から32歳)、千歳市(18歳と22歳)から自衛隊に提供された名簿は6万人分にも及んでいます。帯広市では、自宅に制服姿の自衛隊員が現れ、「高校を卒業するお子さんがいると思うのですが」と自衛隊への勧誘に訪れた事例まであったそうです(いずれも北海道新聞の報道より)。

2 提供する自治体の対応は正しいのか

そもそも、個人情報保護法67条1項では「行政機関の長等は、法令に基づく場合を除き、利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供してはならない。」とされます。自治体から自衛隊への名簿提供が「法令に基づく場合」といえる根拠はあるのでしょうか。自治体が根拠としているのは以下の法律および施行令です。
・自衛隊法97条1項「都道府県知事及び市町村長は、政令で定めるところにより、自衛官の募集に関する事務の一部を行う。」
・同法施行令120条「防衛大臣は、自衛官の募集に関し必要があると認めるときは、都道府県知事及び市町村長に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる。」
しかし、自衛隊法はそもそも組織法であり同報97条1項にも名簿を提供すること事務として明記されているわけではありません。また、施行令に至っては行政機関である内閣だけで制定できるので国会が制定する「法令」とはいえません。防衛省・総務省は「法令に基づく場合」として提供してよいとの通知を出していますが(令和3年2月5日付け防衛省・総務省連名通知)、行政が示す解釈が常に正しいわけではありません。「法令に基づく場合」にあたるとして提供する根拠は認められないのではないかと考えます。

3 自衛隊の自殺者数

名簿提供の背景として自衛隊への志願者減少が挙げられています。しかし、令和4年防衛白書によれば、自衛隊では、平成29年90名、平成30年62名、令和元年60名、令和2年66人、令和3年58人の自殺者が出ています。まずは、これほど多くの自殺者を出してしまう組織体制を自浄すべきではないでしょうか。
なぜ、自衛隊だけに名簿提供が認められるのか。戦争の足音にも聞こえます。

4 個人情報の保護は人間としての基本権であること

札幌市では、対象となる満18歳及び満22歳の住民の「4情報(氏名、住所、性別、生年月日)」が住民基本台帳から抽出され、紙媒体で自衛隊に提供されています。提供を望まない方に向けて、7月31日まで郵送またはメールでの除外申請が受け付けられています。提供を望まない方はまずはこの制度を利用されるのがよいと思います。
https://www.city.sapporo.jp/shimin/koseki/jieikannbosyu.html
しかし、個人情報の保護は人間としての基本権として保障されるべきものであり、除外申請などを設けてお茶を濁すのではなく、個別に事前に同意した人についてのみ自衛隊に個人情報を提供する形式を原則とすべきではないでしょうか。

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