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 先日、事務所の総会にて、ドキュメンタリー映画「憲法を武器として ― 恵庭事件 知られざる50年目の真実 ―」を鑑賞しました。感想を含めてこの映画をご紹介いたします。

●恵庭事件とは
 「恵庭事件」とは、1962年、自衛隊演習地隣接地で酪農を営む兄弟が、自衛隊の通信回線を切断したことにたいし、自衛隊法121条(自衛隊の所有する武器その他の防衛の用に供する物を損壊した者は5年以下の懲役または5万円以下の罰金に処する)に該当するとして起訴された事件です。
被告となった酪農家兄弟は、長年隣接する演習場の騒音や汚水被害に苦しめられていました。騒音により両親は身体を壊し、牧場では乳牛の乳量の減少や受胎率の低下などの被害を受けました。兄弟はやむにやまれぬ思いで、演習を止めるため、演習場内の通信回線を切断しました。
 裁判では、3年半、40回もの公判が行われました。そこで争われたのは、自衛隊が憲法違反であるか否か、でした。

●臨場感ある法廷シーン
 映画は、当時の映像や関係者の証言、さらに法廷の再現ドラマで構成されています。
この再現ドラマが見ていて面白く、印象に残りました。弁護団が「この裁判は“憲法裁判”です」と熱く迫ると、それに応えた若い裁判官が「違憲法令審査権の行使も考える」と発言。ところが、公判を重ねるごとに裁判官の態度は煮え切らないものになっていく…。結局、判決では、被告人の無罪を言い渡されましたが、自衛隊の憲法判断は回避されてしまいました。本来、権力からの圧力・干渉を受けない「裁判官の独立」が原則である一方、裁判の過程をみると、裁判官に対する国家権力の圧力・干渉があったことを感じさせる経過をたどっていることがわかります。映画内では、それを裏付ける当時の裁判長の娘の証言も紹介されました。
また、再現ドラマでの検察官は、人を小馬鹿にしたようないかにも嫌な奴に演じられており、「本当にこんな言い方するのだろうか、脚色されてるんじゃ?」と思うが、本当にこんな言い方だったそう。
恵庭事件は、憲法裁判として全国から400人を超える弁護士が弁護団を組み闘われた裁判で、法廷に来られない弁護士のために、法廷でのやりとりを録音し文字起こしを行なっていました。その録音テープをもとに役者が弁護士、裁判官、検察官のやりとりを演じており、かなり忠実に再現されているそうです。
 
●「自衛隊」を憲法に明記すること
 再現ドラマ中、弁護士が法廷で以下のように述べています。
 「(恵庭事件は)裁判の場で自衛隊を公然のものとする意図があります。憲法9条の趣旨に反して自衛隊が公然のものとなったとき、自衛隊の海外派兵が行われ、軍備増強が行われていくことでしょう。」
 現在、安倍首相は、憲法改正、特に自衛隊を憲法に明記することを主張しています。安倍政権となってからは、安全保障法制の成立により海外で「駆けつけ警護」が出来るようになり、軍事予算は過去最大にまで膨れ上がっています。恵庭事件当時の弁護士の発言ですが、今と重なる状況を感じ、驚きました。
 この映画をみて、憲法9条の意味や、「自衛隊」について改めて考えることが出来ました。

 この映画の公式サイトで各地の上映スケジュールも公開されています。また、自主上映会の企画案内も掲載されています。
  ドキュメンタリー映画「憲法を武器として ― 恵庭事件 知られざる50年目の真実 ― 」公式サイト
 


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