北海道、札幌を中心とした法律事務所です。財務整理や民事事件など多様な法律問題の解決に取り組んでいます。

 北の峰のご案内

 北の峰2013新春号
巻頭言

 二〇〇九年八月の総選挙で、自民党政権による新自由主義・構造改革の非情さに痛めつけられてきた国民は、自民党に見切りをつけ「政権交代」を実現しました。
 あれから三年四カ月経った今回の総選挙。今度は、新自由主義批判のマニフェストを捨てて、消費税引き上げ、TPP交渉参加、日米同盟強化、原発維持など国民に痛みを押しつけた民主党政権に代わり、政策的には何も変わらない自民党へ再び「政権交代」させました。
 しかし、今回の総選挙の投票率は史上最低の五九%。自公で三分の二の議席を取りましたが、得票率は四割にすぎません。棄権した四割、自公に投票しなかった六割を合計すると、実に七六%の国民が自民党政
権に投票していないことになります。
 選挙は「ゼロ・サム」ゲームではありません。この圧倒的多数の「民意」こそが、今後の自民党政治、来年七月の参議院選挙を左右することになります。
 ミラン・クンデラ(チェコ生まれの作家)は言いました。「記憶し続けること、憶えているということが、弱い民衆の武器である。我々が抵抗する唯一の武器は、記憶すること、決して忘れないこと。」
 私たちは、皆様と一緒に、自由で平和な社会、人権が尊重される豊かな社会を作るために、努力していく決意です。
 今年もどうぞ宜しくお願いいたします。


脱原発~即時原発ゼロを実現しよう! 弁護士 渡辺 達生

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 原発に対する政策が総選挙では大きな争点になりました。脱原発といっても、「即時原発ゼロ」、「卒原発」、「一〇年後の原発ゼロを目指す」、「二〇三〇年代に原発ゼロを目指す」等、政党・政治家により、その内容も違っていました。
 一方、世論調査を行うと、調査により少し違いがありますが、少なくとも六割から七割の国民は、脱原発を支持しています。原発がなくて済むのであれば、ない方が良いという人も含めれば、国民の八割以上が脱原発を支持しています。
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 二〇一一年三月一一日の東日本大震災とそれによる福島第一原発の事故により、日本の大半の原発は、現在も稼働していません。大飯原発を再稼働しなければ、関西はこの夏を乗り切ることができないと強弁し、政府
及び関西電力は、大飯原発の三・四号機の再稼働を強行しました。しかしながら、実際には、関西の電力は、大飯原発の再稼働がなくても大丈夫でした。
 また、北海道においても、五月に泊原発の三号機が定期点検に入り、現在は一機も原発は稼働していません。北海道は、本州と異なり、夏ではなく冬に消費電力のピークが来ますが、現時点で、この冬に北海道で計画停電をやるという話は出ていません。
 このように、日本は、十分すぎるほど電力の余力があり、原発をすべて停止しても、電気が足りているのが現状です。「脱原発」を考える際にもこの現状から出発するのが当然のことです。
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 脱原発を考える際に、もっとも重要なことの一つは、再稼働をする時に、その安全性を如何に確認するのかということです。福島第一原発の事故が実際にあれだけの規模で起き、原子力の安全神話が完全に崩壊してしまった以上、責任を持って、安全と判断し、その判断を保証することは誰にもできないのではないでしょうか。野田前首相は、自分で安全と判断したと強弁し、大飯原発の再稼働を強行しましたが、このような強行をしない限り、原発の再稼働ができないのが現状です。
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 「原発がなくても電気が足りている」、「原発の安全神話は崩壊した」、この二つを前提にすれば、「脱原発」は、「即時原発ゼロ」になるしかないのです。
「即時原発ゼロ」を非現実的と批判する政治家が少なくありませんが、そのような政治家は、まず、既存の原発の再稼働をするのか否か、するとすれば、如何に安全性を確認するのかを明らかにすべきなのです。
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 この原稿を皆さんがお読みになるときには、総選挙が終わり、新しい政権が発足していることと思います
これをお読みなっている方の多くは、「即時原発ゼロ」を願って、投票をされたことと思いますが、多分、「即時原発ゼロ」の政権にはなってはいないでしょう。そうである以上、私たちは、今まで以上に、「即時原発ゼロ」を訴えていきます。
 首相官邸前では、現在も、毎週金曜日の夕方、脱原発の集会が行われています。私も八月に参加してきましたが、そこでの主張は「即時原発ゼロ」です。
札幌でも毎週金曜日の夕方(午後六時から午後八時)に、道庁の北門の前で、脱原発の集会が行われています。現在も二〇〇人程度の人が集まっていますし、真冬になっても、継続します。この集会には、自由法曹団
北海道支部の弁護士が毎回、警備兼参加者として、参加しています。皆さんも十分な寒さ対策をして、是非、ご参加ください。

生活保護バッシングはいじめと同根 弁護士 笹森 学

◆「We gotta respect each other. ほんの少しだけ想い合うダケで 何かが変わるかも知れない」(byAI)という素敵な歌があります。
◆私は、二〇一二年六月に警察に一旦逮捕されながら(と警察は主張しています)逃走、追跡劇を演じて捕まったお騒がせ男の国選弁護人を担当しました。
彼は札幌市から生活保護費を不正に受給したとして告訴されました。車を九台も持っていたのにそれを隠して保護を申請し、二〇一一年九月から二〇一二年の四月までに生活保護費約九六万円を受け取ったというもので、かなり大きく報道され、去る二〇一二年一二月七日、詐欺罪などで有罪の判決を受けました。
◆私は彼の弁護人として記者の取材を受ける度に忸怩たる思いに駆られていました。私の被告人は不正受給を認めていましたから非難されることはやむを得ません。しかし、彼の事件が、生活保護バッシングに利用され、保障を求める弱い人を吊るしあげることに悪用されるように思えたからです。
◆ 生活保護受給者は七月で二一二万四六六七人となり過去最高を更新、今年度の予算は三兆七〇〇〇億円で最大規模に上っています。同時に政府は不正受給に厳罰化で臨み適正受給を徹底するとの方針を打ち出し
たと報道されています。要するに、生活保護予算を削りたいということです。この結果、生活保護受給者が監視され、保護の申請が認められにくくなるという間違った道に進む危険があります。白石区姉妹餓死事件の構図が繰り返される危険を孕んでいます。
◆昨年も、母親が生活保護を受給していることでお笑い芸人がワイドショーなどで糾弾されました。生活保護者が多い地方自治体は地方交付税が無駄になり財源が枯渇するなどと訴える地方分権主義者も現れる始末で
す。前者は家族に扶養できる者がいないことは保護を受ける要件ではありませんから全くの間違いですし、後者も生活保護費は全て国の予算で賄われますから、これまた全くの間違いです。不正受給者が増えているという報道もされています。しかし、この報道もデータを正しく伝えていない間違いです。不正受給の統計には生活保護費を削って子どもの教育費を捻出することなどもカウントされているのです(これを不正受給と言いますか?)。
 世にはびこるこのような間違った情報がどうして間違っているかを日弁連がやさしく説明したパンフを公開しています。
是非一度お読みください!「日弁連・生活保護」で検索して下さい。
◆生活保護制度は、社会から落ちこぼれて死なないための重要なセーフティーネットで、国民が助け合う素晴らしい社会保障の制度です。憲法二五条が保障する社会的人権です。このような一連の生活保護者バッシングはいじめと同根で、弱い者いじめをして世の中への不満を解消する巧妙な世論操作です(結局はナチスのユダヤ人迫害と同じです)。
 このような間違いを真に受けて間違った世の中にしないよう注意しましょう。お互いに助け合う優しい世の中にしたいものです。
◆冒頭の歌はこうも言っています。「一人一人の力で 変えて行ける この世界を もっと もっと to a W o n d e r f u l world!!!」。(HPコラムを改訂)

今、道内の大学でなにが起きているのか

司会 この座談会の司会進行をつとめる池田賢太です。今日は、道内の大学に関する事件に取り組む当事務所の弁護士にお集まりいただきました。まずは、国公立・私立を問わず、各大学においてなぜ、これほどまでに様々な事件が起きるのか。
先ず、その理由からお話しいただけますか。
渡辺 大学の労使問題が増えている背景には、大学自体が深刻な経営問題を抱えていることがあります。具体的には、規制緩和の中で、大学の数が増加し、その一方で少子化が進み、ここ数年は、大学進学希望者数と大
学の定員が拮抗し、いわゆる大学全入と言われる時代になっています。その中で、人気の高いごく一部の有名大学を除き、学生を集めるのに苦労し、定員を下回っているところが多くなっています。特に、私立大学は、学生減が大学の経営問題に直結します。
 旧国公立大学は、二〇〇四年の独立行政法人化(民営化)により、「競争原理の導入」「経営の自立性」がうたわれて、大学の運営が民間企業のようになり、非正規雇用の増大や賃金切り下げ、不当労働行為などが当
たり前に起こるようになったことです。
司会 具体的な事件との関係でお伺いします。まず、解雇が問題となっている事件として、専修大学北海道短大がありますね。内容については、昨年の新春号を参照して頂ければと思いますが、長野弁護士から一言頂
けますか。
長野 最大の争点は、専修短大の閉鎖に伴い、学校法人専修大学の経営者が、整理解雇の要件の一つである、「解雇回避努力」をしたかどうか、ということです。経営側は、専修短大の教員は「北海道短大専任」として採
用したのだから、専修短大がなくなれば、教員が解雇されるのは当然で、その雇用を確保すべき責任はないとして、専修大学教員の一般公募枠に応募させた以外には、専修短大の教員を専修大学で受け入れるという努力
を何もしませんでした。
 しかし、教員の皆さんはいずれも学校法人専修大学に雇用されてきたもので、「専修短大に限定」して採用されてなどいませんし、毎年専修短大から多数の学生が専修大学の経済、経営などの学部に「編入」し、専修短大での取得した単位が、そのまま、学部の単位として認定されてきましたから、「専修大学」の教育の一部を担ってきたといえます。そのような北海道短大の実態からしても経営側の対応は、到底「解雇回避努力」と評価できないと思います。
司会 中島弁護士は、北大非正規職員の雇止め訴訟を担当されていますが、この事件の本質はどこにあるのでしょうか。
中島 旧国公立大学には、たくさんの非正規職員が働いており、大学の研究と運営を支えています。この事件の原告は、北大の契約職員を四年で雇い止めにされました。その理由は、北大には「原則三年で雇止め」とするルールがあり、例え、研究室が是非残ってほしいと要請しても、本人の能力が優れていても、機械的に雇止めにしてしまうのです。
 この問題は、大学で働く人の労働権の保障だけでなく、大学の学問研究条件の保障という意味ももっています。
司会 解雇以外の問題としては、天使大学の不当労働行為問題がありますね。どのような事件でしょうか。
橋本 法人が一方的に就業規則を改訂するなどし、組合への団交拒否、支配介入、不利益取扱いを次々と行っている事案です。
 法人側の言い分は、二〇〇四年「私学法改正の趣旨に則って、「責任あるところに権限を集中させる」ことにしたのであって、「団体交渉において改変されるべき性質のものではなく、交渉の余地はない」と言い放っています。
 天使大学では、二〇一一年二月に教職員の過半数が加入する組合が結成されており、それに対する対抗措置であることは明白です。
司会 道教大の学長選考の無効確認訴訟も手掛けていますね。
佐藤(博)  北海道教育大学は、二〇一一年五月の学長選挙で、神田房行氏と現職の本間謙二氏の一騎打ちになり、教職員の投票では二五〇票対二〇八票で神田房行教授が圧勝したのに、北洋銀行元頭取の高向巌氏
や北海道教育長の高橋敬一氏らが学外委員として名を連ねる学長選考会議が、これをひっくり返し、本間氏の再選を決めました。これが違法無効であるとして、二〇一一年一一月に提訴した裁判です。問われているのは
大学の自治、すなわち教員人事や研究教育の自主決定権です。
司会 新たに組合の立ち上げに関わった大学もありますよね。

香川 道都大学(学校法人北海道櫻井産業学園)では、専任講師であるにもかかわらず事務職との兼務を命じられ、その後専任講師を辞めて事務職になるよう迫られ、これを拒絶したところ、教授会で審議して教員不適
格という議決をするとの通告を受けた例がありました。
 当時、教職員組合はなく、弁護士が代理人として大学側と交渉をしましたが、その後組合が結成され、組合の団体交渉を通じて専任講師の地位を確保することができました。
司会 これ以外にもありますね。
佐藤(博)  札幌大学では、大幅な賃金カットをさかのぼって実施されるなど、組合を無視した不当労働行為と、労働条件の不利益変更が大問題になっています。他の大学からの相談も多数寄せられています。
司会 なぜ大学を取り巻く事件が多くなってきたのでしょうか。最初の質問とも関連しますが、佐藤哲之弁護士に一言お願いできますか。
佐藤(哲)  いろんな角度から見ることができると思いますが、ここでは、まず各大学が経営的に困難を抱え、それが深刻になっているということを指摘しておきたいと思います。
 大学の経営難の原因の一つに少子化問題があることはそのとおりですが、それだけでなく国からの運営交付金、補助金のあり方など国の大学政策による面が大きい。逆に新自由主義政策の下、企業から「外出し」され
た紐付き研究費の問題もある。
大学審のあり方についての田中真紀子前文科大臣の発言が注目されましたが、問題はもっと根深いと言わなければなりません。
 更に問題なのは、国の締めつけもあり、各大学がこの困難を「あるべき大学」らしくない方法で「克服」しようとしていることです。
 要するに近視眼的な〝経営の論理〞です。大学には高等研究・教育機関として高度な自治が認められています。各大学の構成員がこのことに思いを致し、その回復、確立のたたかいに取り組む中で困難を克服して貰いたいと思います。
司会 急激に増えた大学関係事件の背景、それは、「新自由主義」とそれに基づく「規制緩和」、「競争原理」がキーワードに思います。そうだとすると、これは決して「大学」という枠組みだけで見るべきではなく、広く市民に事実を知ってもらい、社会全体に問題を提起していく必要があると思います。皆さん、ともに頑張りましょう。

面会交流は日本を救う! 弁護士 内田 信也

 「子どものための面会交流!」を合言葉として、家事調停委員や元調査官の有志と一緒に「札幌おやこ面会交流の会」を立ち上げて5年が経過しました。離婚や別居によって別れて暮らす親子の面会交流を支援する団体です。スタッフの平均年齢は、多分「65歳」以上・・・代表の私が最年少という、実に「高貴(?)な高齢者」のボランティアです。

 

 

 司法統計によると、この5年間で、面会交流に関する事件数は大幅に増加し、それにともなって解決が困難な事案が目立つようになりました。2012年4月の民法766条の一部改正により、面会交流と養育費について明文の規定がおかれるとともに「子の利益」を最優先の考慮事項とすることが明記され、協議離婚届に面会交流と養育費についての取り決めの有無についてのチェック欄が設けられ、社会的にも面会交流の重要性に注目が集まりました。面会交流の転換期、新時代と言ってもよいかもしれません。

 家庭裁判所における最近の面会交流審判例をみると、判断基準を限定説から原則容認説に移行する傾向が顕著にみられます。すなわち、子の利益に直接かつ明白に反し、子にとって有害であることが明らかである場合には制限することができるが、できる限り、親子の交流や接触が維持される方向で調整すべきである、というのが家庭裁判所の基本的スタンスです。

 しかし、面会交流事件は、一般の民事事件と違って、合意をすれば解決するというものではありません。合意をしたあと、どのようにそれを「実施」していくか、ということが「命」です。ところが、家庭裁判所は、合意形成までは尽力してくれますが、「アフターケア」としては履行勧告以外やってくれません。せいぜい、「再調停」でしょうか。

 親の意向と子どもの利益は多くの場合ぴったりと一致しません。ズレます。子どもは、親の前で決して自分の本音を語りません。このズレを子どもの視点にたって調整し、親の思いを修正していかなければ、「子どものため」の面会交流は実現できないのですが、それを担保する制度を日本社会は持っていません。そこで出番となるのが、われわれ「第三者機関」です。子どもを「指導し,導く」のではなく、一人の人間と認めて「寄り添い、ともに悩む」・・・・ここが大事なところなんです。紛争の中で子どもの姿を見失い、自分の意向を子どもの意思であるかのように言う親たち。これを見抜き、面会交流を実施する中で子どもの利益を実現すること、それは、単なる面会交流の支援を越えた「親教育」の領域です。面会交流を通じて親自身にも成長してもらわなければなりません。

 先行きの見えない日本。子どもたちの健やかな成長は私たちの希望です。「面会交流は日本を救う」・・・大袈裟でしょうか。

 

 

 さて、2013年1月から「家事事件手続法」がスタートします。改正のキーワードは「当事者の手続保障」です。相手方に申立書の写しを送ることや、記録の閲覧・謄写が原則として認められることによって、調停・審判の運用が大きく変わるでしょう。更に、新しい制度として「子どもの手続代理人制度」が導入されました。これは、面会交流や親権者の変更や親権停止といった子どもに関わる事件について、子どもの意思を尊重するために弁護士を子どもの手続代理人に選任するものです。いずれにしても、「家庭裁判所の新時代」といってもよい、大きな改正です。面会交流の調停・審判で子どもの手続代理人が活躍することが期待されます。

労働契約法改正について 弁護士 長野 順一

 改正労働契約法が2012年8月10日に公布され、有期労働契約(1年契約・6か月契約など期間の定めのある労働契約)について、次の3つのことが定められました。

 第1は、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるようになったことです。

 第2は、期間の定めのある雇用契約であっても、①反復更新され、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できるような場合や、②労働者が契約期間の満了時に、契約が更新されるものと期待する合理的な理由がある場合などには、雇い止めが許されず、それまでと同じ内容で契約が更新されたものとみなされるという、判例で確立している「雇止め法理」が、明文で定められたことです。

 第3は、有期契約労働者と無期契約労働者との間で、不合理な労働条件の差別をすることが許されないことが明確に定められたことです。(第2だけは法律が公布された2012年8月10日から施行済みで、第1、第3は2013年4月1日から施行されます。)

 この改正法は、有期契約労働者の雇用の安定と不合理な処遇改善に向けて、有効な面もあり、とりわけ有期雇用の無期雇用化が促進されるべきことが法律で明確にされた意義は小さくありません。

 しかし、無期契約への転換が認められるために必要な期間が5年というのは、長すぎるといわざるをえず、また使用者が無期労働契約への転換を避けるため、5年の通算契約期間到達前に有期契約労働者を雇止めするなどの事例が生ずる懸念も否定できないなど、有期契約労働者の雇用の安定と不合理な処遇が抜本的に改善されるかは重大な疑問があります。

 今後は、この法律を、無期雇用への転換や、不当な差別の是正のために、できる限り活用するとともに、より実効性ある法制度が実現するよう、さらに求めて行く必要があると思います。

憲法改正に待った!! 弁護士 池田 賢太

 振り返ってみれば、2012年4月27日は歴史的な日になりました。日本国憲法下で初めて、国会に「憲法改正原案」が衆院議長に提示されたのです。内容は、国会の一院制を目指す改憲案でした。あまりニュースにはなっていないように感じます。これは同じ日に、これ以上に有名になった自民党の憲法改正案が発表された影響だと思います。

 憲法改正が現実問題として、政治日程に上がりつつあります。常にアンテナを張っていなければならないと思います。

 さて、この原稿を書くに当たって、やはり自民党改憲案は外せないところです。私の机にはたくさんの資料が積まれています。その資料の中に、伊藤真弁護士のレジュメがありました。伊藤先生は、この自民党改憲案には、4つのポイントがあると指摘されています。

① 立憲主義から非立憲主義へ

② 恒久平和主義から「戦争をする国」へ

③ 天皇の元首化と国民主権の退潮

④ 権利拡大には後ろ向き、義務拡大には前のめり

 まさに、この指摘は的を射ていると思います。「立憲主義」とは、権力を制限し、個人の権利・自由を尊重する大原則です。憲法は、国を、政府を縛る法律です。ところが、自民党の改憲案は、その基本のキがどこかに吹っ飛んでいます。

  私は、憲法9条をとても大切なものだと考えています。日本の平和主義は、単なる平和主義ではありません。恒久平和主義です。戦争と戦争の合間にある一時的な平和ではなく、ゆるぎない平和を念願する、尊い理念だと思います。自民党改憲案では、平和的生存権の姿が消え、国防軍と国家緊急権が台頭してきました。国家緊急権は、「非常事態」を盾に、権力を一極集中させ、憲法の規定をないがしろにするものです。それが濫用されたのは、歴史を見れば明らかです。

 私たちは、いま一つの条文に注目しなければなりません。憲法96条です。

  憲法96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。

  2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法を一体と成すものとして、直ちにこれを公布する。

  いま、この96条を改正しようとする流れが強まっています。超党派議連が、96条の改正案の提出を検討しています。目的はただ一つ。憲法の改正を簡単にするためです。具体的には、各議院の過半数での発議を目指しているようです。

  この改正は非常に重要です。一度、この規程を緩めてしまえば、後はなし崩し的に変わって行くでしょう。両院で過半数を押さえれば、憲法改正発議がなされ国民投票にまっしぐらです。「そんな後ろの条文・・・」なんて言わずに、改正の動きにみんなで「待った!」をかけましょう。

 憲法旗 10.JPG

第32回全国クレジット・サラ金・ヤミ金被害者交流集会報告i 弁護士 石田 明義

 第32回全国クレジット・サラ金・ヤミ金被害者交流集会が「断ち切ろう貧困の連鎖を!!許すな!金利引き上げ」をテーマに10月27日、28日、札幌市内で開かれました。被害者の会、弁護士など約700名余りが参加。二十七日は十九分科会で、多重債務問題、生活保護、保証被害、子供の貧困、非正規問題、ギャンブル依存症などをテーマに被害報告や課題を議論しました。

 記念講演では25年前の札幌市で起きた「母さんが死んだ」餓死事件を取材したジャーナリストの水島宏明法政大学教授が、再び札幌で起こった姉妹死亡事件などを取り上げ、生活保護を受給できない「漏給」問題、不正受給バッシングが不公平に利用されていること、生活保護こそ生命を守るための重要な制度であり基準切り下げを中止させる運動が必要であると問題提起。

 

 2年前に完全実施した改正貸金業法によってサラ金被害、ヤミ金被害の減少など効果があらわれています。しかし、中小・零細業者などの資金需要があるなどとして、金利の引き上げを狙い、貸付の緩和をも求めようとする自民・民主に議員立法の逆流の動きがあり、反対していくことが必要であると報告がありました。12月選挙で、自民党は貸金業法の見直しや規制緩和を公約にしており、早急に反対の声を上げることが必要です。

 

 貧困の連鎖をなくす集会宣言の他、金利引き上げを狙う貸金業法の改悪阻止、保証被害をなくす法制、生活保護や自死対策の充実を求める決議が採択されました。来年は東日本震災の被災地である、仙台市で福島や岩手と共同して開催することが発表されました。

 

 多重債務、貧困の多事争論。2012年版クレサラ白書。2000円(送料160円別)

申込先(札幌陽は昇る会、FAX011-222-4135☎232-8605)お早めにご注文ください。

 

笹森学の書評コーナー

弁護士だって生活苦しいんです!-麻生みこと「そこをなんとか」(白泉社)

 

◆家がビンボーだったので「儲かる弁護士になりたい!」とキャバクラで働きながら司法試験を受験、ギリギリで合格した「改世楽子」通称らっこちゃんでしたが、司法制度改革で弁護士余りの就職氷河期に苦戦。が、キャバクラの客だった大学教授の菅原耕太郎弁護士にお酒の飲み比べに勝った!として事務所に押し掛け入所、てんやわんやが始まるという新人弁護士奮戦記です。◆菅原弁護士は、セクハラ疑惑で大手渉外事務所に入所拒否された優秀な教え子東海林弘明弁護士の救済目的で零細事務所を開設したという設定。司法試験を目指していたが大物政治家の御曹司とデキちゃったシングルマザーになった久保田亜紀も事務員として雇っています。◆監修が弁護士だそうで毎回多くの業界人から取材をしてるらしく楽屋話としては「リーガルハイ」より超リアルで笑みを誘います。兄弁・東海林の元カノとしてやり手女性弁護士、らっこと修習同期の若手渉外弁護士なども絡み、法律問題の表と裏を描いて面白い。物語のオチもヒューマンで理に適っており、ピュアだった頃の初心を思い出させて胸キュンとします。◆TV化されNHKBSプレミアムで放送。


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