北海道、札幌を中心とした法律事務所です。財務整理や民事事件など多様な法律問題の解決に取り組んでいます。

 

サッカーアジアカップと集団的自衛権

 弁護士の佐藤博文です。

 札幌弁護士会には、サッカーチームがあります。私は、創立時からの(名前だけの)部員です。そんな私のサッカー談義を1つ。

 アギーレ監督の八百長試合関与が話題になり、来年(2015年)の1月9日〜31日のサッカー・アジアカップ(オーストラリアで開催)での指揮(選手の“士気”も)を心配する報道がされています。確かに心配です。

 実は、この大会の予選(D組)で、日本は中東のイラク、ヨルダン、パレスチナの3チームと戦います。偶然にもこの地域は、紛争が激化し、難民(シリア、「イスラム国」など)が大量発生、人道支援が必要とされ、日本の係わり方が問題になっている地域です。
 世界の戦争と平和の「へその緒」とも言うべき地域です。しかも、安倍首相は国会で、ここ中東のインド洋入口にあたるホルムズ海峡は集団的自衛権行使の対象であると発言しました。日本国民は、この問題も真剣に心配すべきでしょう。
 
 サッカーというスポーツを契機に、対戦国・選手のことを知り、日本の関わり(イラク戦争責任、パレスチナ問題の米国追従外交、中東での集団的自衛権行使など)について考えたいものです。イラク、ヨルダン、パレスチナの3国がどのような試合をするか(選手の交流や観客の応援ぶりも)にも注目したいですね。
 自国チームのことだけでなく、相手チームや選手のバックグラウンドにも関心をもち、理解しようとする日本人でありたいですね。

皆様 良いお年をお迎えください。

A to Z うえむらあい & かまちさちこは、集団的自衛権の行使に反対する!?(2)

 弁護士の笹森学です。

◆→Z
 前回はAIをとりあげました。
 今回とりあげる蒲池幸子(かまちさちこ)こと坂井泉水(さかいいずみ)、すなわちアルファベット最後のZを冠したZARDの世界は、AIと対照的です。

 *ここではZARDイコール坂井さんとして扱います。

1 1967年生まれの彼女は、AIが圧倒的パフォーマンスを見せた翌年の2007年、40歳の若さで亡くなりました。がんで闘病中、入院先の慶應大学病院の階段から転落しているのを発見された彼女は、その孤高を示すと同時に、まさにレジェンドとなりました。


2 ZARDの世界には、どんな場面だろうと、たった一人の「あなた」しか存在しません。

 すなわち、「世界中の誰もが どんなに急いでも 私を捕まえていて」(Don't you see!)、「信じていても きっとFaraway 思い出になる だから今は行かないで欲しいの 抱きしめて 夢が消える前に」(Good-bye My Loneliness)、「もしあなたを忘れられたら それでもわたし生きていけるのかな」(Today is another day)、「My dream,Your smile 忘れようとすればする程 好きになる それが誤解や錯覚でも」(心開いて)、「きっと忘れない 眩しいまなざしを 信じたい 信じてる あなたが変わらぬように」(きっと忘れない)、「あなたを想うだけで 心は強くなれる」(マイ フレンド)、「今はあなた以外考えられない 胃が痛くなるほど こんなにはまるなんて 価値観は吹き飛んだ!」(世界はきっと未来の中)、「すべてを手に入れることが愛ならば もう失うものなんて 何も怖くない」(永遠)、「君の胸へと戻る時が来た 手を繋ぎ 今踏み出した 新しいこの宇宙へと」(ハートに火をつけて)・・・。

 これらのリリックからは、今この刹那の2人こそが確実なもので、それ以外の人は風景にしか過ぎず、多くの他人との交わりには無関心で、自分の半径3メートルの恋愛にしか興味がないように見えます。これは、1対1の世界で得た愛を、お隣近所ひいては世界中に広めようとするAIのスタンスとの際立った違いに見えます。それは、揺れる想いの中での「こだわってた周りをすべて捨てて 今あなたに決めたの」、だから「in your dream」、すなわち<あなたの中で私は生きる>と決意するリリックに象徴されています。

 このような彼女は、そもそも集団的自衛権の行使いかんには興味を持たないかも知れません。人々の愛と平和を気にすることなく、戦火も彼方の出来事と思っているのでしょうか?


3 しかし、それは違います。
  ZARDの世界が閉ざされているように見えるのは、それがどのような形であれ、恋愛という極私的な問題には自分で対処するしかない、自分の来し方は自分で決着するほかはない、という強い意思が示されているからです。その意味でZARDの世界も、いわば極めて自律的で自立した女性のものなのです。したがって、2人以外の他人に無関心で他人を拒絶するものではありません。

 同時に、だからこそ『無常に流れる時の中で今この一瞬をより良く生きよう』というメッセージが込められているのです。

 それを証明したのが、ZARDが亡くなる2年前の2005年にリリースした後期の傑作「星のかがやきを」です。

 それまで見つめ想う対象としてしか存在しなかった君(恋人)は「本気で世界を変えたいと思ってる私のヒーロー」となって具体化します。ZARDのリリックの中で「星のかがやきを」での変貌した彼の造形は特筆に値します。2人の閉ざされた世界を超えて、他人と当然に交わる広い世界へ羽ばたく、すなわち社会性のある恋人となったからです。

 そして、「喧嘩しようよ 価値観をぶつけあって もっと大きく世界を目指そう」、「ちゃんと逢って 眼を見て話したいね 低空飛行やめ エンジン全開で」と化学反応を起こす互いに自立した積極的な2人として歌われます。だから「あんなに誰よりも近い存在だったのに 別れてしまうと他人より遠い人になってしまうね」と思っても、「何かが終われば また何かが始まる 哀しんでるヒマはない スタートしよう」と、別れがあっても、この時の流れの中で、2人が出会ったことが大切なのだ、と圧倒的に明るく、そして前向きなメッセージとなっています。

 「何かが終われば また何かが始まる 哀しんでるヒマはない スタートしよう」というリリックに込めた思いは?と問われ、ZARDは何と<時は無常である>と答えたそうです。過去に囚われず今この一瞬をより良く生きよう、というメッセージを発し続けた彼女の真骨頂を示しています(彼女は、伝説の船上ファーストライブで、今日は「一期一会」と挨拶しています)。


4 では、「本気で世界を変えたいと思ってる私のヒーロー 眩しいね」と歌う時、彼女は自立した女性として、彼にどのようなイメージを託しているのでしょうか?

 ZARDのメッセージの核心は「今この一瞬をより良く生きよう」ですが、その根底には「時は無常なり」という確信があります。そして、そのような感性が生まれた背景には彼女特有の体験があった筈です。その手懸りとして、ZARDの読書体験に「夜と霧」があったことを指摘してもいいでしょう。アウシュビッツの体験を記したV.E.フランクルの手記で、不朽の名著です。原題は「それでも人生に然りと言う。ある心理学者、強制収容所を体験する」です。そして、ZARDはファンクラブを通じてリルケとニーチェを薦めたと言われています。リルケの「若き詩人への手紙」には<朝から晩まで夢中になれれば、もはや君は詩人だ>という趣旨の一節があり、ニーチェは実存主義の巨匠です。まさに「無常に流れる時の中で今この一瞬をより良く生きよう」というZARDのメッセージの源流を見た思いです。そして、彼女の描く世界は、他人への攻撃や暴力とは全く無縁です。

 そうすると、彼女が、「私のヒーロー」の胸の内に戦争もやむなしと考える感性を認めるとは到底思えません。

 すなわち、ZARDが歌う「本気で世界を変えたいと思っている私のヒーロー」が安倍首相である筈がないのです。


5 したがって、「星のかがやきよ」を発表したZARDが集団的自衛権の行使に賛成するとは思えません。おそらく、表立って異を唱えないかも知れませんが、ZARDは、戦火の中でも今を大切により良く生きようとすると思います。そして、殺戮の戦火を悲しみ続けるでしょう。

 そして本来は、グラウンドの片隅で、たった1人からたった1人に向けられたはずの「負けないで」の健気な気持ちを、あらゆる人々に向けたエールとして伝え続けたZARDにとって、自分のエールを届けようとした人々が殺戮に巻き込まれることを忌み嫌うでしょう。そして彼女の死後もコンサートに集い、その彼女を愛し支え続けたファンも、同じように集団的自衛権の行使に賛成するとは決して思えないのです。
 

◆このように30代〜40代の人々が、無関心のようでいて、本質的には集団的自衛権の行使を忌み嫌い、殺戮の戦争をやむなしと考える感性の持ち主であるはずはないのです。


◆・・・と書いて来たところで、共同通信の無作為アンケート結果が報道されていました(8月4日付け琉球新聞朝刊)。
 それによれば、8月2、3日に共同通信が実施した電話調査で、集団的自衛権の行使に反対が60.2%(賛成31.3%)で前回調査より5.8ポイント上昇でした、閣議決定は説明不足が84.1%(十分12.7%)となりました。とりわけ、年代別では20〜30代では、集団的自衛権の行使に反対は69.7%(賛成24.5%)で前回調査よりも17.9ポイント上昇でした。

 やはり、若い感性は捨てたものじゃない!のです。
 NO PEACE,NO LIFE !

                           
♥ このコラムは、AIとZARDのリリックを借りて筆者の想いを表現したもので、彼女たちの主義主張を断定するものではありません。

 彼女たちは、例えば、人民解放軍的なものを支持するかも知れないし、例えば、スーザン・ソンタグのように正義の戦争を支持するかも知れません。
 また、ブログ<ZARDな日記>に大変な影響を受けました。とても感謝します。

(おしまい)

A to Z うえむらあい & かまちさちこは、集団的自衛権の行使に反対する!?(1)


 弁護士の笹森学です。

◆ 集団的自衛権とはヤクザの論理

 集団的自衛権を行使するとは「てめぇ、俺のダチを殴ったな。許さねぇ」「あんたは俺を殴っちゃいねぇが、渡世の義理だ。悪く思うな」というものです。これを軍隊でやるというのです。

 この結果、数えきれない市井の人々の生命が死屍累々と大地を覆うか霧散霧消するのです。愛くるしい子どもの顔面が歪んで吹き飛び、臨月の妊婦のお腹を銃弾が突き破り、振り向いたあなたの母親の全身がハチの巣になり、子どもに近寄ろうとした父親のはらわたがズリ出て自分で踏んで転倒する。
 これをコンピューター機器による無感覚の戦闘行為が引き起こすのです。
 もはや愛だの恋だのへったくれもありません!
 わが安倍政権は、用意周到な全方位外交が望まれる現在に、国民の平和と安全を「武力で」守ると称して日本国民を殺戮の世界へ連れて行こうとしています。
 「殺戮を厭わず」。これが安倍政権の言う積極的平和主義の本性です。でも、余計なお世話です。

◆ 憲法が守って来た69年の平和が壊される今・・・

 日本は、敗戦後69年に亘り一切の交戦をせず他国にも自国民にも戦死者を出して来ませんでした。200以上にも上る世界の国々が日本を敵国とは見ずに容易にビザを発給します。このように平和主義の国と評価される国は世界に類例を見ません。平和ボケと何と言われようと憲法9条の抑止力の結果です。
 しかし、そのような日本が潰えるのです。今後色々な国から、自分たちの生存を犯す危険な国と認定されかねないのです。
 このような状況にありながら、日本では東欧や中東の春などのようなあからさまな国民運動が今一つ盛り上がりに欠けているように見受けられます。過半数の議席と高い支持率が反対運動を圧倒しているからでしょうか?アベノミクスの恩恵にあずかりたいからでしょうか?
 しかし、内閣支持率も平和主義の観点から不安を感じさせて暫減しつつあります。
 では、なぜでしょう?
 武力を行使することによる実際の「殺戮」に対する「想像力」が欠けているからだという意見があります。
 また、30〜40代の青年世代の動きが活発ではなく非・政治的だという意見もあります。確かに、彼らの世代の動きによって今後の雌雄が決するように思えます。
 そこで、30〜40代の彼らと同世代のエンターテナーの感性を分析することによって、集団的自衛権の行使に対する彼ら世代の動向を予測してみたいと思います。
 取り上げるのは私が心酔する2人の女性歌手、本名、植村愛カリーナと蒲池(かまち)幸子(さちこ)です。どちらも自らペンを持ち、精魂こめてリリックを作り、他人に何かを伝えることを大切にしています。

◆ A→

 植村愛カリーナ。すなわち最初のアルファベットAで始まるAIは1981年生まれ。バリバリの30代です。
 彼女は、2006年ツァーのファイナル、武道館ライブで一世一代のパフォーマンスを見せました。残念ながら私は<日本武道館AI>というDVDでその片鱗を観ただけですが、いち早くヒップホップミュージックを取り容れ、正確で激しいダンスを交えてステージを縦横無尽に駆け回るそのステージは素晴らしいものでした。
 そんな中、極私的失恋歌である最終宣告(LAST WORDS)での「失笑を買うくらい歩きながらI cry。記憶全てかき消したい...帰る場所はもうない。扉閉めて...Say Goodbye」というシャウトが武道館に響き渡ります。私には<あばよ、と言え!!>と背中をドつかれているように聞こえ、失恋体験への共感で観客を煽るそのパワフルさに度肝を抜かれ、仰天したことを忘れられません。
 これは「しがみつかない そんなに弱くない 痛みなんて飲み込んでやる」「何度も何度も努力してきたから 私のこと知ったふりして テキトーなこと言わないで」(Independent Woman)と、メゲルけどいつまでも失った愛に翻弄されてウルウルするのはやめよう、と強靭な意志を持った女性たろうとする徹底した自立性に共通しています。だからと言ってAIは、ウルウルウジウジすることを、ボロボロになり痩せ細る弱さを否定しているのではありません。それを認めるからこそ、「My friendの声がむねの奥に響いて涙...それとひきかえに私がどれだけやれるか見せるから!!!」(365)、「あなたがくれた優しさを抱いて今度は私がMake you smile」(大切なもの)、「あなたが私を護るから・・・・私があなたを護るから」(Story)、などのリリックに明らかなようにAIは、必ず誰かがあなたを見守っている、人は独りで生きていない、そう、人との関わりの中でこそ成長する主体的な自分が基本である、と訴えるのです。
 だからこそAIは、2006年の武道館で満員の観衆に向かって飛翔し、<周りの困っている人に手を差し伸べよう、憎み合い殺し合う争いをやめて愛し合おう>と訴える傑作「I wanna know」をオープニングに選び、疑いなく、世界に対して愛と平和のメッセージを発信する日本を代表するエンターテナーとなりました。
 そして、3・11にいち早く反応したAIは、以降「余裕がなくて 優しくなれない そんな時でも ちゃんと分かってくれている人がいる」「君が笑えば この世界中に もっと もっと しあわせが広がる 君が笑えば すべてが良くなる この手で その手で つながる」(ハピネス)、「いつの間にか 当たり前のことが 出来なくなってた 余計なことを考えすぎて 素直になれない why? そんな時もある でも 人の愛で人は変わる」「家族、友達、恋人も となりの知らない人も Come on! It's OK みんなで手をつなごう」(One Love)など平易で心に迫るリリックで、お隣近所の平穏と優しさこそが人の心を癒すために必要で、愛と平和の基本であることを確信を持って歌い続けています。
 このような彼女が、殺戮を招く集団的自衛権の行使に賛成するわけはありません。
 そして、彼女と感性を共有するファンも全く同じだと思います。
 NO PEACE

やさしさのリレー 〜カモメの子〜

アップロードファイル 208-1.jpgアップロードファイル 208-2.jpg

事務局の柿田泰成です。

ある日のお昼の出来事です。

当事務所の事務職員が、近くのビルのそばに、一羽の鳥がいることに気付きました。
ケガをしているようには見えないが、近づいても飛んで逃げることもしないことから、まだ飛ぶことのできない子どもの鳥であることがわかりました。しばらく周りを見渡しましたが、親鳥は見当たりません。はぐれてしまったようで、ビルに映る自分の姿を仲間だと思って留まっていたのかもしれません。


そこで、その事務職員が、撮影した鳥の画像を、動物園にメールで送り連絡をとると、“おおせぐろかもめ”の亜成鳥らしいこと、このままだと力尽きて死んでしまうこと、保護対象ではないので、動物園での対応は難しいことを教えてもらいました。
そして、出来ることがあるとすれば、近くの川(今回の場合、カモメが集まっている近くの川、豊平川)に連れて行ってあげることとアドバイスを受けました。


この話を聞いた私と先輩(男性事務局)の2名は、段ボールを持ってかけつけました(これも動物園の方のアドバイスです)。
かけつけると、すでに周囲のビルに勤務している方々が、このカモメの子を気遣い、水をあげたり床を濡らしてあげたりしていました。


先輩が、周囲の方々に「豊平川で放そうと思います」と声を掛け上記の経過を説明すると、やはり親鳥はいっこうに姿をみせておらず、周囲の方々も賛同してくれました。すると先輩は、「おいでー」っとかもめの子に人間の言葉を掛けて手を差し伸べ(「おいでー」って言って分かるわけないのに…)、まるで我が子に接するように、その子をやさしく抱き上げ、段ボールに入れてあげました。抱き上げた時、その子は少し驚いたようでしたが、おとなしく段ボールに入ってくれました。


豊平川で、スーツを着た二人組は大きな段ボールを抱えて、遠くで水遊びをしている若者を横目に見ながら、川岸へ向かいます。
ビジネス街では当たり前の格好でも、蒸し暑いお昼の豊平川では妙に浮いてしまいます。
中州にカモメの群れを見つけると、彼は、またもそっとカモメの子を抱え、川に放してあげたのでした。


今回のように、多くの人々のやさしさがつながっていくことが増えたなら、世の中はもっと良くなっていくのかもしれません。

無事にカモメの子が成長してくれることを願っています。

【声明】集団的自衛権を容認する閣議決定に抗議する!

アップロードファイル 206-1.pdf

            集団的自衛権を容認する閣議決定に抗議する事務所声明


 安倍内閣は、2014年7月1日に開催された臨時閣議において、従来の憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定を行った。私たち北海道合同法律事務所に所属する弁護士・事務局一同は、自衛隊の違憲性を争った恵庭事件や違憲判決が下された長沼ナイキ訴訟、自衛隊イラク派兵差止訴訟などに取り組んだ事務所として、この閣議決定に強く抗議する。

 安倍首相は、閣議後の記者会見において、冒頭、「いかなる事態にあっても国民の命と平和な暮らしは守り抜いていく。内閣総理大臣である私にはその大きな責任があります。」と“決意”を述べた。しかし、集団的自衛権行使を容認することは、日本が他国のために戦争当事国になることを意味する。また、国連憲章上、集団的自衛権は軍隊による武力行使を前提にしており、自衛隊に国際法上の「軍隊」の地位を与えることになる。

 安倍首相の“決意”は、戦後一貫して守り抜いてきた他国民を殺さず自国民を戦死させない平和主義を捨て去ることであり、憲法9条2項の「戦力の不保持」及び「交戦権の否認」を名実ともに放棄することである。これは、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」憲法すなわち私たち自身の「決意」に真っ向から反するものである。

 私たちは、過去2度の世界大戦を経験した。世界の市民が殺し合い、また銃後の一般市民が無残に殺される近代戦争の悲惨さを学んだ。日本国憲法の前文及び第9条の恒久平和主義は、戦争から得た最大唯一の財産である。この財産があったからこそ、日本は世界から「平和を愛する国」と敬意を払われ、政府の行為によって自衛隊が海外に派兵されることがあっても、少なくとも建前としては、人道支援、復興支援、武力行使を伴わない国際平和維持活動などにとどまり、戦闘行為に直接関与することはなかった。にもかかわらず戦後70年を目前に控え、日本は、再び戦争をする国への第一歩を踏み出した。

 集団的自衛権は、過去、武力行使の口実として用いられてきた。そもそも、2度の世界大戦は、いずれも自衛のための戦争として行われていたことを忘れてはならない。宗主国が植民地を守るための戦いも自衛のための戦争であったし、テロとの戦いもまた自衛のための戦争であった。戦争の歴史は、一面では常に「自衛のための戦争」だった。

 しかもこの間、日本の政府は、自衛権により守るべきものを「自国の領土と国民」から地理的限定のない「権益」に変え、アメリカは「先制的自衛」「敵基地攻撃」まで自衛権行使の範囲に拡大している。

 当然のことながら、私たち弁護士事務所は、依頼者から、委任の範囲を超えて仕事をすることは許されていない。政府も同じである。私たちが、信頼して委託した事項以外のことをすることは許されない。「厳粛な信託」を明記したものが「憲法」であり、憲法によって権力の暴走に歯止めをかける仕組みを「立憲主義」という。すなわち、日本国憲法は「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。」と宣言している。今回の閣議決定は、この憲法の歯止めを無視した点で、立憲主義に違反するものである。

 この閣議決定により、日本の平和主義を破壊する愚かな策動が第一歩を踏み出したことは明らかである。私たちは、政府に対して、この閣議決定に改めて強く抗議するとともに、その即時撤回を求める。また、今後予想される、この閣議決定を前提にした違憲の立法やアメリカとの協定締結を阻止するために、市民の皆さんとともに、全力を上げる。

 私たち北海道合同法律事務所は、平和を愛する全ての人たちと手を結び、日本の主権者の一人として、恒久平和主義を掲げ、立憲主義と民主主義を尊ぶ日本国憲法の理念を実現するため、今後もなお一層の努力を続けることを表明する。
  
                                       2014年7月2日 

                                       北海道合同法律事務所
                                          弁護士 池田賢太
                                          弁護士 石田明義
                                          弁護士 内田信也
                                          弁護士 香川志野
                                          弁護士 川上 有
                                          弁護士 笹森 学
                                          弁護士 佐藤哲之
                                          弁護士 佐藤博文
                                          弁護士 中島 哲
                                          弁護士 長野順一
                                          弁護士 橋本祐樹
                                          弁護士 廣谷陸男
                                          弁護士 三浦桂子
                                          弁護士 山田佳以
                                          弁護士 渡辺達生
                                              事務局一同

憲法カフェを始めました

 弁護士の池田賢太です。
 
 このたび、カフェで憲法を学ぶ講座を始めました。
 毎日の報道に接するたびに、戦争する国へ近付いていると感じます。何かしたいけれど、何もできない日々を過ごしていました。
 加えて、閣僚や政府関係者、議員の暴言・失言も頻発しています。昔なら失職したであろう発言でも、うやむやにされています。

 私たちは、一人では生きられません。だからこそ、よりよく生きるために、社会を作りました。一人ひとりがたくさん集まって社会を作りました。補い合いながら、よりよく生きていこうと考えたのです。

 たくさんの人が集まると、なかなか意思決定ができません。だから、代表者を選んで、政治をしてもらうことにしました。私たちが、私たちの代表者を選ぶのですから、選ばれた人は、私たちのことを一番に考えてもらわなくてはなりません。私たちの権利を侵害するようなことがあってはいけないのです。

 日本国憲法には、たくさんの権利が書いてあります。これは、かつて権力者が容易に侵害した権利たちです。憲法の基本的人権の規定は、これを侵害してはならないぞ!という権力者たちへの警告です。憲法は、私たち主権者から、権力者に対する委任状なのです。委任された権力者は、憲法を超えて政治を行うことは許されません。憲法は、権力者を縛る鎖です。これが、立憲主義という考え方です。

 今一度、私たちは憲法を掲げて、権力者をしっかりコントロールしなければならないのです。そのためには、この立憲主義という考え方を、もっとたくさんの市民に知ってもらう必要があると考えました。その試みの一つが、『Café de KENPO!』です。 

 できるだけわかりやすく、気軽に憲法を知ってもらいたい。活用してもらいたい。あなたが、憲法を語るための言葉をプレゼントしたい。
 そんなコンセプトで、まずは全5回の講座をします。

 1回目は、私を含めて、20代から80代まで、延べ19名の参加を頂きました。チャンスがあれば、皆さんもぜひご参加ください。

 お問い合わせは、当事務所の弁護士池田賢太までご連絡ください。
 問合せ先 011ー231ー1888(当事務所代表番号)
        cafe-de-kenpoアットマークoutlook.jp
        (迷惑メール対策のため、@をアットマークと表記しています。)

デモに参加しよう!

アップロードファイル 203-1.jpgアップロードファイル 203-2.jpg

 事務局の柿田泰成です。
 
 現在、政府が進めようとしている集団的自衛権容認について、連日大きく報道されていることは、みなさまもご存知かと思います。

 みなさまはどのようにお考えですか。なぜ「集団的」自衛権なのでしょうか。

 集団的自衛権容認に対して、多くの弁護士や憲法学者が反対の声を上げています。
 日本国憲法が施行されて以来、集団的自衛権は“行使できない”という解釈がずっと貫かれてきました。一言でいえば、集団的自衛権の行使はとは、同盟国と他国との間の争いに参加することです。つまり、「殺し、殺される世界」への参加表明と言えます。

 世の中、「平和」が嫌いな人には、滅多なことがない限り出会いません。
 多くのみなさんも「平和」であってほしいと思うでしょう。

 では、どんな「平和」がいいのか?
 いろいろな考え方があります。
 「争いは起きてしまうものだから、『戦争と戦争の間』も『平和』というのだ。」という考えもありますが、私は、「ずーっと(恒久的)平和」であることを望みます。

 前置きが長くなってしまいましたが、反対の意思を表す方法は選挙だけではありません。
 「みんなで集まって社会に訴える行動」=「デモ」という方法もあります。
 「戦争には行きたくない!」「集団的自衛権反対!」「平和が一番!」そのような思いを表現するために、金曜日夕方大通西3丁目に集まりませんか?
18時15分頃にデモ行進をスタートし、およそ15分程度で終わります。
 待ち合わせまで「カフェで時間をつぶそう」ではなく「デモでも行ってみるか」そんなノリでOKです!

 「デモ」って何すればいいか分からないと思う方は、まず、デモの後ろの方で前の人のあとをついて行ってみましょう。
 また、デモに直接参加しなくとも、プラカードを作ってみるという参加方法もあります。

 「戦争をしたくない」その思いを、いっしょに表明しましょう。

デモ:6月13日(金)集合18:00・スタート18:15@大通西3
   6月20日(金)集合18:00・スタート18:15@大通西3

呼びかけ:北海道憲法会議・北海道憲法改悪反対共同センター

奨学金返済問題 全国一斉ホットライン

アップロードファイル 202-1.pdf

 弁護士の橋本祐樹です。

 北海道学費と奨学金を考える会(通称:インクル)が、6月15日(日)に奨学金返済問題ホットラインを実施いたします。
 今回のホットラインは、奨学金問題対策全国会議が、全国一斉に開催する電話相談会です。北海道においてはインクルが相談を担当します。

 インクルは、札幌在住の若手弁護士と学生が中心となり、「奨学金問題」を解決すべく発足した団体です。 ホットラインでは、弁護士が電話で相談にお応えます。
 「延滞金が重すぎる」
 「ブラックリストに載せると言われた」
 「生活がきびしく奨学金を返せない」
 「裁判を起こされた」
 「保証人に請求すると言われた」
 「借りたいが返済が不安」
 などなど、奨学金のことならどんなことでも構いません。お気軽にご相談ください。

 また、日本学生支援機構は、奨学金の返済が困難になった方への救済制度を、2014年4月から一部変更しております。説明をお聞きになりたい方も、お電話ください。

 日  時 2014年6月15日(日)10:00〜17:00
 電話番号 0570ー000551


 なお、6月15日(日)10:00と言えば、サッカーワールドカップの日本対コートジボワール戦のキックオフと同時刻です。
 私たちは「ザックもいいけどJASSO(日本学生支援機構)もね」ということで、「ハーフタイムに電話をください」「試合終了後に電話をください」と呼びかけます。

 「借りたものは返せ」という「常識」のもと、「自分が借りた奨学金なのに・・・相談していいのかなぁ」と当事者はまだ声を上げづらい状況にあります。私たちは「上げづらい声」を上げてくれた事件で、当事者の救済につなげた経験があります。「こんな相談してもいいのかなぁ」なんて思わないで、迷わずお電話ください。お待ちしております。

ギャンブルで町おこし!?

 
 弁護士の池田賢太です。

 2014年5月11日、小樽の街に約200人が結集しました。「カジノ誘致に反対する小樽市民の会」の設立総会です。私は、その総会後の記念講演の講師として参加してきました。
 カジノやギャンブル依存症について知識があるわけではないのですが、小樽は私の母の出身地ですし、何より母校(小樽商科大学)の恩師から指名を受ければ断ることはできませんでした。

 そんな状況だったので、講演をするにあたっていろいろな資料や映像を見て勉強しました。皆さん、カジノと言えば、どんな印象をお持ちですか?

 きらびやかなネオンの中で、タキシードを着た紳士がルーレット台の横にたたずむ。
 お金持ちの紳士淑女が優雅に遊ぶ施設。乱れ飛ぶ札束とウハウハ気分。
 なんと言っても、ラスベガス!

 私もそんなイメージしか有りませんでした。
 でも、実態はそんな生易しいものではありませんでした。ギャンブル依存症、多重債務、治安悪化、犯罪増加、人口流出・・・。どれをとってもカジノで町おこしになるとは全く思えません。少し先を行く韓国のカジノは、まざまざと現実を見せてくれました。

 そもそも、カジノは賭博です。カジノ施設は賭場です。どちらも刑法で禁じられているにもかかわらず、なんとなくカタカナってかっこいいイメージを与える気がします。

 「わたしの街にカジノが来るんだって!」
 「わたしの街に賭博場が来るんだって!」

 2つは全く同じ内容ですが、印象は全く違いませんか?
 
 日本には、すでにカジノと呼べるものがあります。パチンコです。
 2011年の警察庁の調べでは、日本のパチンコ店舗数は1万2323店舗、パチンコ台数は458万3000台あるということです。世界中のギャンブル機械が701万1308台ということですので、日本に世界中の約65%のギャンブル機械があることになります。
 1260万人がパチンコ愛好者で、厚労省調べでも500万人がギャンブル依存症者だとされています。依存症は、病気ですので適切な治療が必要です。しかし、ギャンブル依存のような行為依存の場合には、薬物依存などと異なり、自分の行為に依存していますから、自分自身が依存症者であるという認識を持つことがとても難しいと言われています。日本における、依存症者への対策はまだまだ遅れていると言わざるを得ません。

 また、多重債務の問題にしても全く同じです。終わったのはいわゆる「過払いバブル」だけで、多重債務の問題は何一つ終わっていないのです。
 多重債務者と聞いて、皆さんはどんなイメージを持つでしょうか。「お金の管理もできないだらしない奴」と思うでしょうか。私も、弁護士になる前はそうでした。
 しかし、相談に来る多重債務者の方の多くは、真面目な方が多いという印象です。しっかり、地道に払ってきたんだけども、どうしようもなくなって相談に来たという方がほとんどです。そして、借入れをした原因の多くは、生活費の不足分を補うためでした。給料が減った、病気をして働けなくなった、解雇された・・・。そのようなときに、公的な援助が充実していないために、生活が成り立たなくなる。優しく手を差し伸べてくれるのは、消費者金融しかなかったというケースが少なくありません。多重債務者は、社会保障が充実していないがための「被害者」という側面も大きいと思います。

 労働法制も改悪されようとしています。「一生ハケン」の働き方が現実化しています。そのような中で、一攫千金で大金持ちになれるかもしれないという幻想をカジノは抱かせます。カジノは、何も生み出しません。偶然による富の移転でしかありません。
 日本の世界に誇る技術力は、その継承者を失い、高めたいはずの「国際競争力」はどんどん落ちていくでしょう。

 カジノは、今の社会の矛盾から目をそむけさせるための「目くらまし」でしかありません。一時的には活気づくかもしれませんが、残るのは今よりもひどい現実です。
 カジノ法案は、すでに昨年衆議院に提出され、5月20日にも、内閣委員会で審議入りと言われています。何としてもこの法案を通すわけにはいきません。今からでも遅くはありません。しっかりと学び、「賭博で町おこしなんかいやだ!」という声を挙げていきましょう。

奨学金裁判、勝訴!

アップロードファイル 199-1.pdf

 弁護士の池田賢太です。

 4月15日、奨学金をめぐる裁判の判決がありました。当事務所の橋本弁護士が主任を務めた事件です。

 この事件は、高校生のときに借りた奨学金の返還を求められたものです。本件の奨学金は、保護者が借入れ・返済を主導しており、元学生さんは全く知りませんでした。その後、元学生さんは自己破産されたのですが、その際、債権者一覧に奨学金を載せていなかったため、免責の効果が及ぶかが争点となっていました。

 第1審の札幌簡裁では、元学生さんがご自身で裁判を進めていました。保護者が対応していたので、奨学金の貸付けは知らなかったと主張し、裁判所は「貸付けを認めるに足る証拠はない」として日本学生支援機構の請求を退けました。
 この裁判に対し、機構が札幌地裁に控訴しました。控訴審では、返還誓約書が証拠として提出され、上記の争点がクローズアップされました。私たち弁護団は、控訴審での本人尋問が終わった段階で、この裁判に関わることになりました。このとき、札幌地裁は、元学生さんに和解の話合いを勧めており、元学生敗訴の心証を持っていたと思われました。私たちは、弁論再開を申し立てて、もう一度主張立証するところから再スタートしました。

 私たちは、奨学金の特殊性や本人の認識・記憶に沿って主張を行い、保護者の尋問や立証の限りを尽くしました。
本当に元学生さんは奨学金の存在を知らなかったこと。保護者が、親の責任で借入れをしたこと。だから、債権者一覧表に奨学金が載っていなくても不思議は無く、過失もなかったのだ。
裁判所には、丁寧に説明したつもりです。

 この裁判の中で、日本学生支援機構は、「個人メモ」という業務管理システムの画面を証拠として提出しました。この「メモ」には、元学生さん本人にも返還を請求していたことや、本人から破産手続をする予定だと聞いた、などと書いてありました。しかし、これらは、元学生さんの記憶とは異なるものでした。
 そこで、私たちは、この「メモ」の正確性について徹底的に批判をしました。保護者が電話に出たにもかかわらず、本人に電話したと記載されていたこと。時折住所確認をした形跡が残っているのですが、住民票を追ってみると、「個人メモ」で住所確認した時点ではすでに別な住所に住民票を移していたことなどです。

 今回の判決で、裁判所は、「業務システムに記録された内容の正確性には大きな疑問がある。」として、証拠の信用性にまで踏み込んだ判断をしました。この「個人メモ」は、同種裁判ではよく提出される証拠ですから、今回の判決が他の訴訟に与える影響はとても大きいと思います。

 この元学生さんは、判決後記者会見を開き、おかしいと思ったら諦めないで戦ってほしい、相談してほしいとお話しされました。

 私たちも同じ気持ちです。奨学金で悩んでいることがあれば、ぜひ一度ご相談下さい。解決の糸口が見つかるかもしれません。

 以下、弁護団の声明も掲載いたしますので、ぜひ、ご一読ください。


                   奨学金裁判判決を受けての声明

                            2014(平成26)年4月15日

                               北海道奨学金問題対策弁護団           
                                   弁護士 西 博和
                                   弁護士 山本完自
                                   弁護士 池田賢太
                                   弁護士 橋本祐樹

1 本日、札幌地方裁判所民事第1部は、独立行政法人日本学生支援機構(控訴人)が元奨学生(被控訴人)に対して奨学金の返還を求めた控訴審の裁判について、控訴人の請求を棄却する判決を言い渡した。
 当弁護団は、この判決を素直に歓迎する。

2 本件は、元奨学生は、高校生時代に日本育英会から奨学金を借りていたものの、借入・返済等の全ては保護者においてなされ、元奨学生は借用証書等にサインはしたが、自ら借りたという認識はなかった。その後、元奨学生は自己破産手続を取ったが、債権者一覧には奨学金債務を記載しなかったという事案である。
札幌簡易裁判所での第1審では、元奨学生本人が訴訟を遂行し、「本件貸付けを認めるに足る証拠はない。」として日本学生支援機構の請求が棄却されていた。
 控訴審においては、①元奨学生本人の認識・承諾のもとで、奨学金の貸付がなされたのか、②本件返還契約に基づく貸金返還請求権が破産法253条1項6号にいう「破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権」に当たるか否か、が争点となった。

3 札幌地方裁判所は、控訴審段階ではじめて日本学生支援機構が提出してきた借用証書の効力を認めた。奨学金の特殊性を理解せず、金銭消費貸借契約の一般論の枠でしか判断せず、①の争点で元奨学生の言い分を認めなかった。この点は、未成年者である高校生が、将来的な職業・収入もわからないにもかかわらず、多額の債務を負うことについて、その借入れの意味を正確に理解することが極めて困難であることを見過ごしている。奨学金を金銭消費貸借契約と同視するものであり、その実態を無視した判断と言わざるを得ず、この点は評価できない。
 しかし、「本件返還契約に基づく債務の返済は、専ら被控訴人の母親がこれを行っており、本件借用証書に署名押印した以降、控訴人から被控訴人に対して本件返還契約に基づく債務を認識させる措置がなされておらず、本件借用証書署名当時、被控訴人が高校生であって、その後破産・免責申立まで6年経過していることも合わせ考えると、被控訴人が、本件破産・免責申立ての際に本件返還契約に基づく債権の存在を失念し、債権者一覧表に記載しなかったこともやむを得ないというべきであって、そのことについて被控訴人に過失があったと認めるには足りない。」と認定し、②の争点において元奨学生の主張を認めた。この点は、破産手続時における元奨学生の認識という実態に即した判断になっており評価できる。
また強調すべきは、日本学生支援機構が証拠として提出した「委託業者の業務システムの記録」の信用性について、「業務システムに記録された内容の正確性には大きな疑問がある。」としてこれを否定した点である。これは今後の同種裁判および日本学生支援機構の債権管理実務に大きな影響を与えるものであり、日本学生支援機構の実務改善に強く期待する。

4 当弁護団は今後も、日本学生支援機構による硬直的な取立て、個別事情を踏まえない形式的・一律的提訴から、元奨学生を個別的に救済するための活動を継続する。
それと同時に、本判決を受けて、奨学金問題の本質が、教育を受ける権利の保障であること改めて確認する。憲法上保障される教育を受ける権利が、家庭の経済的事情により左右されてはならない。将来を切り拓くための奨学金が、将来を奪うようでは本末転倒である。日本の中等・高等教育における高学費・貸与型奨学金が持つ問題点の改善に向けて、インクル(北海道学費と奨学金を考える会)、奨学金問題対策全国会議等とも連携を取りつつ、より一層努力することを表明する。