北海道、札幌を中心とした法律事務所です。財務整理や民事事件など多様な法律問題の解決に取り組んでいます。

 

植村さんと植村裁判を支える市民の会にご支援を

  弁護士の小野寺です。

  法学館憲法研究所の「今週の一言」に寄稿した植村訴訟の報告記事を事務所のホームページにも掲載します。

 

1 直接対決

 2016年4月22日午後3時30分、札幌地方裁判所805号法廷。朝日新聞元記者の植村隆氏が、自身の書いた慰安婦の証言記事を「捏造した」などと繰り返し非難するジャーナリストの櫻井よしこ氏及び出版社であるワック、新潮社、ダイヤモンド社に対し、損害賠償や謝罪広告等を求めた名誉毀損訴訟の第1回口頭弁論は、植村氏、櫻井氏がそれぞれ法廷で意見を述べる直接対決となった。

 「櫻井さんは、訴状にないことを付け加え、慰安婦になった経緯を継父が売った人身売買であると決めつけて、読者への印象をあえて操作したのです。これはジャーナリストとして許されない行為だと思います」

 植村氏は、法廷で櫻井氏のジャーナリストとしての姿勢をこのように非難した。植村氏の指摘は次のようなものだ。

 植村氏は1991年に元従軍慰安婦である金学順(キムハクスン)氏の証言を記事にした。櫻井氏はこの記事について2014年3月3日の産経新聞に「真実ゆがめる朝日報道」と題したコラムを発表し「この女性、金学順氏は後に東京地裁に 訴えを起こし、訴状で、14歳で継父に40円で売られ、3年後、17歳のとき再び継父に売られたなどと書いている」にも関わらず、「植村氏は彼女が人身売買の犠牲者であるという重要な点を報じ」ていないと非難した。

 ところが、金学順氏が日本国に戦後補償を求めた訴状には人身売買されたなどどこにも書かれていない。つまり、櫻井氏は金学順氏の訴状に書かれていない事実を引用し、植村氏が慰安婦の真実を歪めて報じたという印象を強調しようとしたのである。

 他方、櫻井氏は、法廷での意見陳述で「『従軍慰安婦問題』と、悲惨で非人道的な強制連行の話は、朝日新聞が社を挙げて作り出したものであります」と、「慰安婦問題=朝日捏造説」を全面展開した。そして、「まるで運動家のように司法闘争に持ち込んだ植村氏の手法は、むしろ、言論・報道の自由を害するものであり、言論人の名に悖る行為ではないでしょうか。」と批判した。 

 まるでネットの言論をなぞるように朝日捏造説を滔々と述べ、事実に基づかない記事を平気で書く。どちらが言論人の名に悖るかは明らかだろう。

2 なぜ裁判に踏み切ったのか?

 櫻井氏は、意見陳述で「言論には言論」ともっともらしい理屈をもって司法に救済を求めた植村氏を難じた。しかし、櫻井氏の言説は「言論」といえるだろうか。

 櫻井氏の言説の一例を紹介する。

 「過去、現在、未来にわたって日本国と日本人の名誉を著しく傷付ける彼らの宣伝はしかし、日本人による『従軍慰安婦』捏造記事がそもそもの出発点になっている」「植村隆氏の署名入り記事である」(雑誌WiLL2014年4月号)

 「植村氏は金氏が女子挺身隊として連行された女性たちの生き残りの一人だと書いた。一人の女性の人生話として書いたこの記事は挺身隊と慰安婦は同じだったか否かという一般論次元の問題ではなく、明確な捏造記事である」(2014年10月23日週刊新潮)

 「若い少女たちが強制連行されたという報告の基となったのが「朝日新聞」の植村隆記者(すでに退社)の捏造記事である。植村氏は慰安婦とは無関係の女子挺身隊という勤労奉仕の少女たちと慰安婦を結び付けて報じた人物だ」(2014年9月13日週刊ダイヤモンド)

 ところで、なぜ櫻井氏は植村氏の記事を「捏造」と断定するのか。その出発点となったのが1991年8月11日付朝日新聞大阪版の以下の記事である。

 思い出すと今も涙 元朝鮮人従軍慰安婦 戦後半世紀 重い口開く 【ソウル10日=植村隆】日中戦争や第二次大戦の際、『女子挺(てい)身隊』の名で戦場に連行され、日本軍人相手に売春行為を強いられた「朝鮮人従軍慰安婦」のうち、一人がソウル市内に生存していることがわかり「韓国挺身隊問題対策協議会」(尹貞玉・共同代表、十六団体約三十万人)が聞き取り作業を始めた。」(1991年8月11日朝日新聞大阪版社会面1面)

 これが「捏造」批判の対象となっている記事の一つである。その主な論拠は、勤労動員する「女子挺身隊」と無関係の従軍慰安婦とを意図的に混同させて日本が強制連行したかのような記事にしたというものである。櫻井氏もこの論拠に依っている。

 しかしながら、植村氏が記事を書いた当時、韓国では「挺身隊」という言葉は「慰安婦」を意味し、日本のメディアもそれを踏襲していた。朝日だけでなく、読売、産経などの他紙も慰安婦のことを「挺身隊」と表記していたのである。

 過去の慰安婦報道を調べれば植村批判に根拠がないことがわかるはずであるし、せいぜい言葉遣いという枝葉の問題に過ぎない。

 つまり、櫻井氏は、植村氏を慰安婦問題捏造の象徴に祭り上げて意図的に批判を加えているのである。そして、櫻井氏は、植村氏が歴史修正主義者から「捏造記者」と苛烈なバッシングを受け、娘を「殺す」と脅迫され、勤務する北星学園大学も「暴力」に晒されるなかで、あたかもその流れに便乗するように、執拗に植村氏を攻撃し続けたのである。これは言論ではなく人身攻撃に他ならない。植村氏は司法に救済を求めざるを得なかったのである。

3 札幌訴訟の提訴と移送を巡る攻防

 札幌訴訟が提起されたのは2014年2月10日であり、裁判が始まるまで1年以上かかったことになる。それは提訴後、櫻井氏側が、植村氏が札幌訴訟提訴前に文藝春秋、西岡力氏(東京基督教大学教授)を相手に東京地裁に提訴提起していたことなどを理由として、東京地裁への移送を申し立てていたからである。

 札幌地裁は、櫻井氏側の移送申立てを受けて、事件を東京地裁に移送する不当決定を下した。しかし、植村さんは捏造記者という汚名を受け激しい誹謗中傷、更には脅迫まで受けている。こうした被害と社会的影響力のある櫻井氏の言説とは切り離して考えることができないはずである。弁護団は、札幌高裁に不服を申立てて植村さんの被害実態を繰り返し主張した。また、北星大卒業生の有志が短期間で2629通を超える署名を集めてくれた。こうした主張と活動が功を奏し、札幌高裁は東京地裁への移送を認めない逆転勝利決定を下し、札幌地裁で審理されることになった。これは裁判管轄に留まらない大きな勝利である。

 札幌訴訟は第3回口頭弁論期日まで進行している。現時点では櫻井氏の表現が「事実の摘示」か、「論評」かについて、それぞれの主張を整理している段階である。これは前者であれば櫻井氏は植村氏が捏造したことが真実であること等の立証が必要であり、後者であればそこまでの立証は必要ないことになる。極めて法技術的論点ではあるが、訴訟の帰趨に関わる重要な争点について、双方の主張を闘わせている。

4 市民に支えられて

 2014年は異様な年であった。同年8月5日、朝日新聞は「慰安婦問題を考える」・「読者の疑問に答えます」と題した検証記事をきっかけに巻き起こった朝日バッシングは、植村氏や北星大に飛び火して苛烈な「暴力」に晒され、大学は植村氏の雇用継続を決めかねていた。他方、報道機関の多くは火の粉が降りかかるのを恐れてか報道を自粛し、地元紙ですら北星大を取り巻く異様な状況を積極的に報じようとしなかった。

 こうした状況下で、暴力に毅然と立ち向かったのは市民であった。2014年10月6日、学者、ジャーナリスト、弁護士等が発起人となり「負けるな北星!の会」(略称マケルナ会)が発足し、国内外の賛同者は1000名以上に膨らんだ。また、同年11月7日には、北星大に届いた脅迫状に関して、全国の弁護士380名が札幌地検に威力業務妨害で刑事告発し、同年12月26日にも全国352人が告発人、全国の弁護士438人が告発代理人となり、北星大への電凸の模様を動画サイトで公表した人物を札幌地検に刑事告発した。暴力による言論弾圧、歴史の書き換え、大学の自治への圧力を許さないという社会の意思を示したのである。

 そして、植村氏の雇用継続に揺れ続けた北星大は、2014年12月17日に記者会見を開き、2015年度の契約更新を発表したが、記者会見で方針転換の理由について、マケルナ会の激励や弁護士の告発、弁護士会の支援表明などの支援を挙げた。

 また、上田文雄元札幌市長や香山リカ氏らは、植村氏の裁判は報道・表現の自由、民主主義を守るための闘いであるとして広く支援を呼びかけ、「植村裁判を支える市民の会」を設立した(ブログで裁判期日等を詳しく報告しているので、ぜひご覧頂きたいhttp://sasaerukai.blogspot.jp/)。

 つまり、植村氏は、慰安婦問題を否定したい人々にとっては慰安婦捏造の象徴であるが、私たちにとっては自由の象徴であり、植村裁判は日本の右傾化への抵抗なのである。私たちはこの問題を裁判と支援の両輪で抗していきたい。

 

自衛隊員・家族のための全国一斉相談に向けて街頭宣伝!

 弁護士の橋本祐樹です。

 明日の自衛隊員・家族のための全国一斉相談のために、雪の降るなか、自衛隊の基地が多い千歳市のスーパー前で150枚のチラシを撒き、街頭宣伝をしてきました!

 相談したことも、相談いただいた内容の秘密も厳守しますので、ご心配不要です。

 安心してご相談ください。

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「自衛隊員・家族のための全国一斉相談」を実施します

 弁護士の橋本祐樹です。

 自衛官の人権弁護団・北海道は、昨年9月に国会で安保法制が審議されていた頃、「自衛隊員と家族・恋人のための『安保法案』緊急相談!」を実施しました。ここでは、35件の相談が寄せられました。自衛官の家族等から、自衛官の生命・身体の安全や権利を案ずる相談が多かったのが印象的でした。

 この電話相談に続き、今回は安保法制の施行日である3月29日の直前に、自衛官の人権弁護団・北海道は、下記の要領で「自衛隊員・家族のための全国一斉相談」を行ないます。

  相談開始日時  2016年3月26日(土)午後3時~

  電話番号    0120-777-239

            (2016年3月26日(土)午後3時~午後8時)

  FAX番号     011-231-3477

            (2016年3月26日(土)午後3時~27日(日)午後3時)

  メール      jieikan-jinkenアットマークhg-law.jp(アットマークを@に置換えてください。)

            (2016年3月26日(土)午後3時~27日(日)午後3時)

  相談担当   自衛官の人権弁護団・北海道に所属する弁護士

  相談内容   ・安保関連法の内容、政府・防衛省の対応に対する質問・意見

           ・自衛隊員の「リスク」や労働条件、兵士の権利に関する質問・意見

           ・その他、現在抱えている問題の相談

  先日、新聞等のメディアで、今年の防衛大学校の卒業生の任官拒否が昨年の約2倍に上っているとの報道がありました。卒業生419名中47名、11.2%が自衛官にならないという選択をしたというのです。

 防衛省幹部は景気が上向きになり民間の求人が増えたからだと主張しているようですが、安保法制の影響があることは明らかです。

 というのも、安保法制施行直前にもかかわらず、自衛官の生命・身体の安全についての対応は何らなされていないのです。海外赴任を命じられた場合、拒否できるのか、海外で自分の身に何かあった場合に家族はどうなるのか、海外派兵を前提にした訓練の強化やそれによる事故の多発など、自衛隊員や家族の不安は切実です。

 そこで、これまで自衛隊員や家族の人権問題に取り組んできた自衛官の人権弁護団・北海道が、改めて自衛隊員や家族から相談を受けることとしました。加えて、今回は、自衛官の人権獲得のために闘ってきた全国の弁護団や労働者の権利を擁護することを目的とする弁護団と協力しての全国規模の相談会となっています。

 当然ながら、秘密は厳守しますので、心配せずにご相談ください。

 チラシダウンロード ↓

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はじめてのタ・イ・ヨ!

 弁護士の池田です。

  このHPでも度々紹介している、インクル(北海道学費と奨学金を考える会)が、今年もイベントを実施します!

 気になる日程は、2016年3月20日の日曜日。時間は午後1時30分から午後3時30分(予定)です。場所は、恒例になりましたさっぽろテレビ塔のライラックです。

  「奨学金」を借りる前に、あるいは返す前に、これだけは知っておいて!という情報盛りだくさんでお待ちしています。「奨学金」と上手に付き合う方法をお伝えします。

  この奨学金問題に取り組むようになって、早3年が経過します。この間、インクルや奨学金問題対策全国会議などの地道な取り組みで、奨学金問題は広く知られるようになりましたし、制度的にも猶予が5年から10年に延長されるなど、少しずつですが前進してきました。

 もちろん、現在も猶予制度の恣意的運用、一括繰上げ請求問題など、改善あるいは糾弾すべき問題はたくさんあります。

 今回、このイベントに合わせて、道内各大学の奨学金担当者にアンケートを実施しており、道内の大学生の奨学金利用状況を明らかにする予定です。また、各政党に対しても、前回の選挙で掲げた学費や奨学金などの教育政策の進捗状況を質問し、今後の政策化への本気度も問うています。

 次代を創る教育をどのように充実させるのか。私たちが目指すべき奨学金制度とはいかなるものか。皆さんとともに、考えたいと思います。

 ぜひ、ご参加くださいね!

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【イベント】 はじめてのタイヨ!

【主  催】 インクル(北海道学費と奨学金を考える会)

【ゲ ト】 岩重佳治弁護士(奨学金問題対策全国会議事務局長)

【日  時】 2016年3月20日(日)  13:30 ~ 15:30

【場  所】 さっぽろテレビ塔 ライラック (札幌市中央区大通西1丁目)

【参 費】 学生:無料 社会人:500円 (事前申込不要)

【連 先】 北海道合同法律事務所 011-231-1888

       弁護士 池田賢太  弁護士 橋本祐樹

 チラシのダウンロードはこちら はじめてのタ・イ・ヨ.pdf

給費の実現へ!過半数の国会議員から賛同メッセージ獲得☆

弁護士の橋本祐樹です。

 

司法試験に合格した後1年間、国により義務づけられる研修を司法修習と言います。弁護士、検察、裁判官のもとに配属され、法曹三者のそれぞれの目線で法律実務を身をもって学ぶ場です。この1年で、修習終了後の実務開始に必要なスキルとマインドを醸成しなければならないため、司法修習生には修習専念義務が課され原則としてアルバイトが禁じられています。

その間の生活保障として、私が司法修習をしていた頃までは国から給料が出ていました。しかし、私たちの司法修習の翌年である2011年から、給料が出なくなりました。

つまり、司法修習生は無給で研修をしなければならないのです。アルバイトができないので、生活費は国からの貸付(貸与金といいます)か、家族からの仕送りに頼らざるを得ません。

多くの法曹志願者が大学・法科大学院で奨学金を借りており、その平均は300万円にものぼります。それに加えて約300万円の貸与を受けてしまったら、返すのが大変です。

そういう理由で、法曹志願者が激減しています。2015(平成27)年度入学のための全国の法科大学院の受験者数はのべ9351人であり、2004(平成16)年度の受験者数(40810人)の4分の1以下に、貸与制(無給制)に移行した2011(平成23)年度(20497人)と比べても半数以下にまで落ち込んでいます。また、2015(平成27)年度に実際に法科大学院に入学した者は、過去最低の2201人で、学生を募集した54校のうち50校で定員割れとなっています。

このような状況に危惧を抱き、権利の守り手を国が責任をもって育成すべきとの観点から、弁護士会やビギナーズ・ネット(http://www.beginners-net.org/)はこれまでも活動をしてきました。

 

2014(平成26)年12月からは、全国52の弁護士会、ビギナーズ・ネット等が協力して、国会議員の先生方に対して「司法修習生への給費を実現すること」について賛同を得るための説明等を行い、給費の実現をはじめとする司法修習生への経済的支援に関する賛同メッセージをもらう活動をしてきました。何度も何度も議員さんの事務所を訪問してきたのです。

そして、2016(平成28)年1月、ついに全国会議員(717)の過半数(359)を上回る議員さんから賛同メッセージが得られました。

 

現在も増加を続けており、合計362名の議員さんからメッセージをいただきました。内訳は衆議院251通、参議院111通です(1月20日現在)。野党のみならず、与党の議員さんからもたくさん賛同メッセージをいただいております。

 

北海道では、札幌は対象議員20名中18名、旭川は対象議員2名中2名、函館は対象議員2名中2名、釧路は対象議員4名中3名から賛同メッセージをいただいており、全国でも最高レベルのメッセージ獲得率でした。

 

また、賛同メッセージ獲得過半数達成にあわせて、全国52の弁護士会と日弁連が全国一斉で司法修習生への給費の実現を求める会長声明を発表し、司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会とビギナーズ・ネットもそれぞれ声明を発表しました。

 

 札幌弁護士会の会長声明
  https://www.satsuben.or.jp/info/statement/2015/14.html

 

 日弁連の会長声明

  http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2016/160120.html

 

今国会では追い風が吹いています。

今通常国会で給費を実現させるために、今後、より一層の活動を行おうと思っております。国の三権の一翼を担う司法制度についての人材育成が「研修は自己負担ね」というブラック企業のようなものであり続けたら、司法制度の受益者たる国民の権利擁護に悪影響が出てしまうと考えているからです。

 

 司法修習生への給費の実現に対するみなさまのご理解とご協力をよろしくお願いいたします。

 

北星学園大学植村さんの名誉棄損訴訟のご紹介

 弁護士の小野寺信勝です。

  元朝日新聞記者で、北星学園大学非常勤講師の植村隆さんの名誉毀損訴訟をご紹介します。

 1 はじめに

 2015年2月10日、朝日新聞元記者で北星学園大学非常勤講師の植村隆さんを原告として、ジャーナリストの櫻井よしこ氏、週刊新潮や週刊ダイヤモンド、雑誌WiLLを発行する出版社らに対して、名誉毀損を理由として謝罪広告の掲載や損害賠償の支払いを求める訴訟を札幌地裁に起こしました。

2 植村隆さんに対する誹謗中傷

 植村さんは、1991年8月11日付朝日新聞大阪本社版社会面に、はじめていわゆる従軍慰安婦として名乗り出た金学順さんの署名記事を書きました。その記事は「『女子挺身隊(ていしんたい)』の名で戦場に連行」というものでした。植村さんはこの24年も前の記事を巡り「捏造記者」という汚名を着せられ、激しい誹謗中傷に晒されています。

 植村批判は、勤労動員する「女子挺身隊」と無関係の従軍慰安婦とを意図的に混同させ、日本が強制連行したかのような記事にしたなどというものです。

 しかし、植村さんが記事を書いた当時、韓国では「挺身隊」という言葉は「慰安婦」を意味し、日本のメディアにおいても踏襲されていました。朝日新聞だけでなく、読売新聞、産経新聞などの他紙も慰安婦のことを「挺身隊」と表記していました。このように植村批判は全くの的外れであり、慰安婦問題にとって全く本質的な批判ではありません。朝日新聞の2014年8月5日の検証記事でも植村さんの記事に「意図的な事実のねじ曲げなどありません」と結論付けられました。

 ところが、植村さんへの誹謗中傷は止むどころか、日ごとに高まるばかりでした。北星学園大学にはいやがらせ電話や手紙が寄せられ、「あの元朝日(チョウニチ)新聞記者=捏造朝日記者の植村隆を講師として雇っているそうだな。売国奴、国賊の。植村の居場所を突き止めて、なぶり殺しにしてやる。すぐに辞めさせろ。やらないのであれば、天誅として学生を痛めつけてやる」などの脅迫文も多く届いています。さらに、脅迫は植村さんの家族にまで及んでいます。インターネットには娘さんの写真が晒され、コメントには「こいつの父親のせいでどれだけの日本人が苦労したことか。親父が超絶反日活動で何も稼いだで(原文ママ)贅沢三昧で育ったのだろう。自殺するまで追い込むしかない」「なんだまるで朝鮮人だな。ハーフだから当たり前か。さすが売国奴の娘にふさわしい朝鮮顔だ」などと極めて下品な書き込みが溢れています。

3 櫻井よしこ氏による憎悪の扇動

 ジャーナリストの櫻井よしこ氏は、植村さんや家族、北星学園大学が、このように脅迫や暴力の恐怖に晒されていることを知りながら、雑誌やインターネット上で植村さんの記事が「捏造」であると誹謗中傷を繰り返し、さらに教員の適格性がないと人格非難まで続けています。

 たとえば、「若い少女たちが強制連行されたという報告の基となったのが「朝日新聞」の植村隆記者の捏造記事である」「こんな人物に、はたして学生を教える資格があるのか、と。一体、誰がこんな人物の授業を受けたいだろうか」というように。

 それどころか「植村氏を教壇に立たせて学生に教えさせることが大学教育のあるべき姿なのか、と北星学園大学にも問いたい」と、北星学園大学を中傷する発言さえあります。

 ジャーナリストであるならば、植村さんの言論活動が暴力により否定されそうな事態に対して、立場を超えて脅迫者らを非難すべきです。ところが、櫻井氏は「社会の怒りを掻き立て、暴力的言辞を惹起しているものがあるとすれば、それは、朝日や植村氏の姿勢ではないでしょうか」などと、あたかも暴力行為を正当化するかのような言説まで振りまいています。

  櫻井氏の社会的影響力に照らせば、その言動が植村さんに向けられた憎悪を煽るものだと言うことができると思います。私たちは提訴前に櫻井氏に対して記事の訂正と謝罪を求めましたが、櫻井氏はそれを拒否したため、名誉回復のためにやむを得ず訴訟を提起することになりました。


 4 移送決定

  このような経緯から、私たちは、札幌地方裁判所に名誉毀損訴訟を起こしましたが、札幌地方裁判所は、被告らの移送申立てを受けて、東京地裁に移送する決定をしました。その理由は、被告らの関係者は東京周辺に在住していることや被告らが札幌に出廷する期日調整が困難であるといった技術的理由から、東京地裁に移送を決定しました。

  しかし、非常勤講師である植村さんと著名なジャーナリストや出版社の経済格差は明らかです。しかも、植村さんは名誉毀損の被害者であり、その名誉毀損によって職を失った方です。それにも関わらず、植村さんと弁護団に毎回、東京に出廷を求めることは極めて不公平です。また、移送決定は、マスメディアによる一市民に対する名誉毀損事件を事実上東京地裁の専属管轄とする結果を招く先例となる無謀かつ極めて不当な決定です。

  植村さんの被害の実態を十分に審理するためには、裁判は地元である札幌地裁で行うことが必要ですし、最もふさわしいと考えられます。そこで、私たちは札幌高等裁判所に抗告し、現在、審理されています。


 5 植村事件は「自由」を守る闘い

 この裁判は、札幌の弁護士を中心に107名もの弁護士が代理人となっています。

 植村さんの名誉を回復するためであることは言うまでもありません。慰安婦問題をなきものにしたい者たちによって「捏造記者」のレッテルを貼られ、過去の言動をなきものにされようとしている言論の自由、脅迫や圧力等による大学の人事介入や大学の自治、学問の自由の危機。こうした自由の危機的状況を象徴する事件だと考えているからです。

 植村訴訟は、私たちは札幌地裁での審理を求めていますが、残念ながら札幌地裁は不当にも東京地裁への移送を決定してしまいました。札幌高裁の判断も予断を許しません。

  しかし、仮に、東京地裁に移送された場合であっても、講演会や裁判報告集会などを企画して、みなさんに裁判の状況をご報告したいと考えています。また、植村さんの名誉回復や今日の事態を打開するためには市民の皆様のご支援も必要になります。今後ともぜひ応援をよろしくお願いします。

強行採決 なまらムカつく!!

 弁護士の池田賢太です。

 

 7月13日の月曜日、お昼と夕方、2回にわたって若者たちが街頭宣伝を行いました。そのタイトルが、「強行採決 なまらムカつく!!」でした。

 そして、今日、衆議院平和安全法制特別委員会は、戦争立法可決の強行採決をしました。なまらムカつく!!

 私は、講演会で繰り返し、繰り返しお話ししていますが、この闘いに負けはありません。確かに、憲法は蹂躙されています。表面上はボロボロになっているかもしれない。

 だけど、その核心部分である「民主主義」とそれを支える「個人主義」と「自由主義」は、色褪せることなく、むしろ輝きを増しています。自民党をはじめ改憲勢力は、戦後一貫して、この核心部分を壊そうと躍起になっていたけれど、そこに手をつけさせていないのです。そして、今も、その核心部分を守りぬくために多くの個人が立ち上がり、抵抗し続けています。

  その意味で、私たちは負けたことがありません。百戦百勝です。彼らこそ、一度も勝つことなく、負け続けて来たのです。

 私たちが負けるときは、私たち自身が、個人主義を手放し、自由主義を手放し、民主主義を手放し、そして立憲主義を手放したときです。

 だとすれば、私たちに負けるときは絶対に来ない。

 秘密保護法も、昨年の閣議決定も、今日の強行採決も、あるいは今後行われるだろう数にモノを言わせた参議院採決や衆議院の再可決も、私たちが乗り越えなくてはならない、数多の試練のひとつです。

 個人の尊厳を掲げ、自由と平和を叫ぶ私たちの理想や理念が間違っているはずがありません。

 そもそも、今日の強行採決は、95日間の国会延長されたときから、予定されていたことじゃないですか。 想定内のことじゃないですか。

  この採決を止められなかったと、無力感に襲われる必要は全くありません。ただ、闘いが次のステージに移っただけなのです。衆院本会議、参議院特別委員会、参院本会議。まだまだ、私たちがやるべきことは残っています。

  多くの市民は、行動する私たちに希望と期待を持っています。様々な事情から、行動出来ない人もいるでしょう。私たちは、そんな人をこれからもっともっと仲間に取り込んでいかなければなりません。

 もう一度、確認しましょうよ。私たちの理想や理念が間違っているはずなど、絶対にありません。

 下を向き、卑屈になっているところに、仲間は集いません。頑張ってきたからこそ、やるせない思いにかられますが、私たちが諦めたら、彼らの思うツボです。

 怒りを力に。

傷みを力に。

 私たちは、絶対に許さない。

私たちは、絶対に負けない。

  私は、今日も予定通り憲法カフェをやります。一歩も引かない覚悟です。摺り足で、少しずつでも、前に進みます。

 いつも元気に頑張ることはとても大変だけど、私たちは独りではありません。

  胸を張って、堂々と抗議の声を!行動を!

『日本は再び戦争をするのか~集団的自衛権と安保法制の目的とは~』

 弁護士の小野寺信勝です。

 

 映画監督で作家の森達也さんと対談しました。

 

 札幌弁護士会主催の市民集会『日本は再び戦争をするのか~集団的自衛権と安保法制の目的とは~』に、森達也さんを講師としてお招きし、私が森さんに会場の質問も交えて質問するというコーナーを担当しました。

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 森さんは、オウム真理教を信者側から扱ったドキュメンタリー映画「A」「A2」の映画監督です。集団的自衛権への解釈変更や「戦争立法」の審議。森さんがその状況を、どう捉え、私たちはどのような道を選択すべきかをお聞きしました。

 

 政府は、「戦争立法」制定の理由を、中国の急速な台頭や北朝鮮、国際テロの脅威など、日本を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増していることから抑止力を高めるためだと説明しています。

 

 森さんは、そんな政府の説明にオウム以降の治安状況を引き合いに次のような疑問を投げかけます。

 

 日本の治安は、戦後、著しく向上している。ところが、オウム以降、体感治安は急激に悪化し、刑事政策は厳罰化の一途を辿っている。これは日本を取り巻く安全保障の危機意識の高まりと戦争立法と同じではないか、と。

 

 そして、森さんはノルウェーの刑事司法の寛容化に日本が取るべき進路のヒントがあると指摘します。

 

 ノルウェーも1970年代前半までは治安が悪く犯罪者には厳罰をもって臨んでいました。しかし、刑事政策の行き詰まりから寛容化に舵を切ると、治安は大幅に改善したそうです。その根底には、犯罪の原因のほとんどは貧困や愛情不足にあり、犯罪者に与えるのは苦しみではなく、愛情と正しい教育だという考え方があります。

 

 閉塞感が蔓延し、先が見えない。得体の知れない何かに怯えて、漠然とした不安感に包まれた社会。森さんの考えは綺麗事なのかもしれませんが、これからの社会の有りようを考えていくうえで、とても大切な視点を与えてくれたと思います。

 

年金減額違憲訴訟 第2次提訴

 弁護士の香川志野です。

 2015年(平成27年)5月20日、道内に住む215名の年金受給者が札幌地方裁判所へ、年金額減額処分の取消を求める「年金引き下げ違憲訴訟」の第2次訴訟を提起しました。すでに4月15日に142名が第1次提訴を行っており、第2次提訴と合わせて、原告の合計は357名になりました。6月にも第3次提訴を行う予定です。

 この裁判は、国民年金の年金額減額が、憲法13条(幸福追求権)、同25条(生存権)、同29条(財産権)に違反する違憲な処分であるとしてその取り消しを求めるものです。詳しくは、第1次提訴についてのコラムもご覧ください。

 (http://www.hg-law.jp/info/column/post_4.html

 この裁判の意義について、裁判所に提出した訴状の一文をご紹介いたします。

「原告らは、年金世代が憲法上の年金制度のあり方を問うことを通して、憲法が定めるこの国のあり方を明らかにし、次世代の人々が、本当に人間としての尊厳が守られ、人間らしく、安心して暮らせる平和で豊かな世の中にすることに貢献したいと考えている。これが本訴訟の目的であり、意義なのである。」

 第1次訴訟の第1回口頭弁論期日は、6月16日午後1時30分から行われます。

年金者組合が年金減額違憲訴訟を提起!

 弁護士の佐藤哲之です。

 2015年(平成27年)4月15日、年金者組合が中心となって、142名が札幌地方裁判所へ、年金減額処分の取消を求める訴訟を提起しました。島根、徳島に次いで、全国3番目です。

 当事務所の弁護士(本文の最後に記載しています)が代理人となっています。

 この訴訟で、問題としたのは、「特例水準解消」を口実に、2013年(平成25年)10月以降の年金額を1%減額したことです。

 年金額は、これまで物価にスライドして改定されてきましたが、1999年(平成11年)から2001年(平成13年)にかけて物価が下落したのに、景気対策のためとして、国は特例法を制定し、それにスライドさせて年金を減額しませんでした。

 しかし、2012年(平成24年)のいわゆる「社会保障と税の一体改革」の中で、この特例によって年金が高くなっているから減額するとされ、2013年(平成25年)に、まず、1%の減額が断行されたのです。

 これでは、ただでさえ劣悪な水準で、とても「健康で文化的な最低限度の生活」など営めないのに、消費税増税や生活用品の値上がりが続く中で、さらに年金額を引き下げるもので、高齢者の生活を破壊することになります。

 こんな年金減額は、憲法25条(生存権)、13条(幸福追求権)、29条(財産権)に違反するもので、到底許せません。

 私たちは、原告のみなさんとともに、年金世代が憲法上の年金制度のあり方を問うことを通して、憲法が定めるこの国のあり方(「戦争する国」ではなく、「真の福祉国家」)を明らかにし、次世代の人々が本当に人間らしく、安心して暮らせる平和な世の中にすることに貢献したいと感じています。これからも注目して下さい。

本件訴訟の代理人

  佐藤哲之、笹森学、石田明義、池田賢太、内田信也、小野寺信勝、

  香川志野、加藤丈晴、川上有、佐藤博文、中島哲、長野順一、

  橋本祐樹、三浦桂子、山田佳以、渡辺達生

  (すべて当事務所の弁護士)