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 弁護士の中島哲です。

 前回、Jアラートが鳴ると、NHK教育までまったく同じ番組を放映するのは、国民保護法が関係していることまでお話しました(前篇はこちら。)。

 国民保護法とは、正式には「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律」といい、内閣官房の「国民保護ポータルサイト」によれば、武力攻撃事態等において、武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、国民生活等に及ぼす影響を最小にするための、国・地方公共団体等の責務、避難・救援・武力攻撃災害への対処等の措置が規定されています。
 そして、同法に基づく指定公共機関の役割の1つとして、放送事業者は警報を放送することが定められているので特番が組まれる、ということのようです。

 不承不承でしたが、法律があるならしようがない、といったん納得しかけましたが、やはり気になって調べてみました。
 国民保護法44条1項は、「警報の発令」として、「対策本部長は、武力攻撃から国民の生命、身体又は財産を保護するため緊急の必要があると認めるときは、基本指針及び対処基本方針で定めるところにより、警報を発令しなければならない。」(対策本部長は、事態対処法11条1項により内閣総理大臣と定められています。)とし、同法45条は「対策本部長等による警報の通知」として、1項で対策本部長から指定行政機関への警報の通知を定めた上で、2項で「指定行政機関の長は、前項の規定による通知を受けたときは、その国民の保護に関する計画で定めるところにより、直ちに、その内容を管轄する指定地方行政機関の長、所管する指定公共機関その他の関係機関に通知しなければならない。」としています。
 そして、同法50条は、これを受けて、「警報の放送」として、「放送事業者である指定公共機関及び指定地方公共機関は、第45条第2項又は第46条の規定による通知を受けたときは、それぞれその国民の保護に関する業務計画で定めるところにより、速やかに、その内容を放送しなければならない。」としています。
 例の特番の法的根拠は、どうやらこの国民保護法50条のようです。

 内閣総理大臣は、武力攻撃があって、国民の生命、身体又は財産を保護するため緊急の必要があると認めるときは警報を出して、それが放送されるという仕組みです。Jアラートの正式名称は、「全国瞬時警報システム」だそうなので、これが同法でいう「警報」ですね。
 ここで、国民保護法2条は「武力攻撃」の定義について、事態対処法(正式名称は「武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律」です)によるとしています。
 そこで、事態対処法を見てみると、同法2条1号は、「武力攻撃」について「我が国に対する外部からの武力攻撃をいう。」としています。

 おや、ちょっと待って下さい。発射した瞬間に「実験」だということも、日本の領土でも領海でもなくはるか数百キロ先の太平洋の沖合に着弾することも分かっているミサイル発射が「我が国に対する外部からの武力攻撃」なのでしょうか。
 そうではないでしょう。
 そうすると、これに対してJアラートを出すことも、これを受けて全テレビ局が特番を組むことも、いずれも過剰反応ですね。

 Jアラートは、これによって「ピタゴラスイッチ」の放映を無くし、我が家に波紋を広げるだけではなく、国民の雰囲気をなんとなく「戦争前夜」モードにもっていく扇動効果があるのではないか、そう思わずにはいられません。
 Eテレさん、「ピタゴラスイッチ」、毎朝放映して下さいね。

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