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弁護士の佐藤博文です。

 平昌オリンピックが始まりましたが、日本政府の動きからは、「平和の祭典」に相応しいメッセージが伝わってきません。
 文在寅(ムンジェイン)大統領が金正恩(キムジョンウン)氏妹らに「心合せ難関を突破しよう」と話した (2.12付報道)一方で、日米の政府は「微笑み外交に騙されるな」と牽制しています。安倍首相は、文大統領との会談で、米韓軍事演習を延期するなと主張し、同大統領から「内政問題だ」と不快感を示された(2.11付報道)という始末です。
「北朝鮮問題」に対する韓国政府と日本政府の違いが如実に表れています。


● 「米国が戦争を語る時、韓国は身震いする」

 これは、昨年(2017年)10月、韓国の著名な女性小説家・韓江(ハン・ガン)氏が米紙ニューヨーク・タイムズに寄稿した文章のタイトルです。同氏は、「韓国(朝鮮)戦争は強大国が韓半島で行なった代理戦争だった」とし、「トランプ大統領とは違い、私たち(朝鮮人)にとっては平和以外のどのような解決策も意味がない。『勝利』というものは嘲笑の種であり、不可能な『中身のないスローガン』であることをよく知っている」と書きました。
 これを、韓国大統領府は、SNS「フェイスブック」に掲載しました。「軍事的選択」と「勝利」にこだわるトランプ政権に対する痛烈な批判と言えます。

 いうまでもなく、韓江氏の寄稿文は、1945年からの連合軍占領下の独立闘争(米ソで分断される)、1950〜53年の朝鮮戦争に加え、1961年からはベトナム戦争に韓国軍が派兵されて6千人の死者を出すなど、戦後の韓国が米国の戦争と共にあったことを指摘するものです。
  
● 軍事行動の作戦統制権は米国にあり、韓国にはない

 韓江氏の寄稿文には、もう1つ重要な意味を読み取ることができます。それは、朝鮮戦争は、1953年の合意で停戦になりましたが、その当事者は、中国人民軍の司令官と北朝鮮人民軍の司令官、アメリカ軍の司令官であり、韓国は当事者ではないことです。軍事行動の作戦統制権はどこにあるのかと言えば、今でも米軍なのです。韓国の人々の意思とかけ離れて、米国は何をするか分からないという不安と恐怖、それが「身震い」するという表現に込められていると思います。拝米主義が支配する日本の権力者たちには理解できない心情でしょう。


● 韓国国民の意思を尊重し、武力によらない解決を

 文大統領は、昨年5月の大統領選挙で、金大中氏以来の太陽政策(平和共存・包容政策)を引き継ぐ候補として圧倒的に支持されて当選しました。注目すべきは、保守を含む5候補全員が、アメリカの先制攻撃に反対していたことです。
 日本政府は、当事者である韓国の人々の意思と、その自主的な取り組みを尊重すべきです。「先制攻撃も辞さない」として北朝鮮を脅すトランプ政権に対しては、国連憲章2条4号と憲法9条1項(いずれも「武力による威嚇」を禁止)に基づいて厳しく批判すべきです。


● オリンピックがターニングポイントになることを願って

 平昌(ピョンチャン)オリンピックを機会に、「北朝鮮問題」について少し考えてみませんか。隣人である韓国・朝鮮の人々に思いを寄せてみませんか。そうした私たちの小さな積み重ねが大事なのではないでしょうか。
 折しも、2月14日(水)には、女子アイスホッケーで、スマイルジャパンと韓国・北朝鮮合同チームとの試合があります。日本チームにとってはオリンピックでの初勝利がかかった大事な試合ですが、双方の選手たちの戦いぶり、観客の応援、試合後のエール交換がとても楽しみです。

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