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 弁護士の佐藤博文です。
 私たちは、毎日、朝から晩まで、悲惨な戦争のリアルを見せつけられています。ウクライナとロシア、NATO諸国の外交・軍事政策が失敗した帰結なわけですが、そもそもこれらの国々の外交・軍事政策の考え方はどういうものなのでしょうか。

国際社会では、「現実主義」が支配しており、それは、次のように理解されています(吉川直人・野口和彦編『国際関係理論』126〜127頁)。
(1) 世界は中央政府が存在しない無政府状態である。
(2) 国際関係におけるアクター(行為主体)は国家である。
(3) 無政府状態において、国家の最大の目的は生き残りとなる。したがって、国家安全保障は国際関係の最優先課題である。
(4) パワーはこの目的を達成する重要かつ必要な手段である。

 以上から明らかなように、国連の役割を軽視し、「平和を望むなら、戦争を準備せよ!」というのです。従って、彼らが語る「平和」は、「戦争がない状態」を意味するにとどまり、それを担保する最大のパワーが核兵器になるのです。そして、国家の「生き残り」を賭けるわけですから、正しい方が勝つとは限らず、勝った方が正しいということになりかねません。

 これに対して、国連は、国際紛争における武力の不行使を決め、力の支配ではなく、法の支配を唱えました。それを担保するのは、武力によらない様々な「政府の政治的及び経済的取り決め」であるとともに、それだけでは足りず「人類の知的及び精神的連帯」が必要であるとしました。
これを最もよく表現したのがユネスコ憲章の前文です。この全文は、桝井妙子弁護士が4月21日のコラム『ウクライナ、その芸術の歴史』で紹介していますので、ぜひご一読ください。

 ユネスコ憲章前文が示しているのは、「平和を望むなら、武器を捨てよ!」(軍縮といってもよい)という考えであり、ここで語られる平和は、「永続する平和」「恒久平和」を意味します。

 改めて、日本の憲法9条を読み直してみましょう。
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」
 日本国憲法が、世界に類例を見ない「平和憲法」と言われ、3大原則の1つに「恒久平和主義」(他の2つは、国民主権と基本的人権の尊重)が入る所以は、その「平和」の意味が単に「戦争がない状態」を指すものではないからです。

 ロシア・ウクライナ戦争が、日々私たち日本国民に問いかけている「平和」の意味をかみしめたいと思います。

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